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こう言ってはなんだが、この小隊でも自分達第三班はかなり成績優秀だった。リーダーのシュラは、毎回実技・筆記試験ともにトップクラスの成績である。現場の指揮能力も高い。少々表情筋が死んでるので、“氷の男”なんて呼ばれてしまうことも珍しくないが、実際はちょっと無口なだけで気も使える優しい人間だ。
他のメンバーも――自慢じゃないがケイシー含めて、毎回それなりに戦果は出している。
対してナンシーの班は小隊の中でも未熟な者が多い。ナンシー本人の実力は低いものではないし、班のメンバーに相当慕われてはいるのだが。
「……班長。ドラゴン級をナンシーの班だけで任せるのは酷だと思うぞ。誰かサポート回した方がいいんじゃないか?」
通信を班長のシュラに切り替えた。すると彼も同じことを思っていたらしく“妥当だろうな”と返してくる。
『既に隊長に上申した。でも却下されている』
「なんで?」
『ナンシーの班に経験を積ませたいらしい。……確かに、露骨に訓練不足ではある。倒せなくても挑めとのことだ』
「あー……」
これが実戦なら捨て駒にする気かと怒ったところだが、訓練なのだから仕方ない。というか、確かにもう少し必死で戦ってくれないと、戦場でお荷物になってしまうという危惧はあるのだろう。
『今回はそれなりに頑張ってくれるかもしれない。隊長がナンシーの班に通達したらしい。……ある程度戦果を出さないと、全員昼飯のプリンを抜きにする、と』
「罰それ!?子供か!」
『私も同じつっこみをした。スルーされた』
「したんかい!」
しかし、どうやらその微妙すぎるペナルティは案外効果があったらしい。モニターで確認していると、ナンシー班が存外健闘している。リザード級が二体消滅した。彼女の班のメンバーとしてみればかなり奮闘した方だろう。
残念ながら頑張りはそこまでだったようで、あぶれたリザード級三体と、大物であるドラゴン級が前衛を突破してこちらに向かってこようとしている。
『ロン班が交戦状態に入った。支援に入る。私に続け』
「イエス、サー!」
今日はウィングの使用は禁止だと通達されている。空を飛ばず、陸上から敵を仕留めよとのこと。ギアをいれ、一気にアクセルを踏みこむ。モニターに映し出される、先頭を行くシュラの赤いマシンを追いかけていく。地面を統べるように走行し、時折岩を乗り越えながら。
『露払いを優先。リザード級を先に片付けるように』
「イエス、サー!」
言いながら、ケイシーは機体のレバーを引いていた。レーザーガンを構え、狙いを定めてボタンを押す。岩場から飛び出していた緑色のオオトカゲの頭が、風船のように弾け飛んだ。この瞬間は、いつ見ても嫌な気持ちになる。モンスターとはいえ、血は自分達と同じ赤い色をしているのだから。
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