7人が本棚に入れています
本棚に追加
<22・月満つれば則ち虧く。>
地獄の中。
私は、ただただ声を聴いていた。
『失敗作のバケモノども、なんとか北側の奴らにけしかけることはできないか?』
『わざと野に放ってみようってわけか。向こうが少しでも混乱してくれたら儲けものではあるが』
『しかし、都合よくあちら側の陣営だけ攻撃してくれるものか……』
『なあに、バケモノが出てくるタイミングが分かっていれば南の軍が回避する方法などいくらでもあるさ』
声が。
『成功作の調子はどうだ?』
『悪くはない。まだ数は少ないが、上手い具合に動いてくれているようだ。素晴らしいな、古代人の技術は』
『だがまだ、機械の動きが悪い。我々の科学力ではまだ足らないということか』
『研究を続けろ。理論はできている。試作品だけでこれだけの威力を示すのだ、完成すればそこらの爆弾も戦車も目じゃない、素晴らしい兵器が出来上がるだろうさ』
声が。声が。声が。
『……例の娘はどうだ?症状はそれなりに重そうだが、出産までもちそうか?』
『はい。かなり膨大な魔力を持った子供であるようで……しかも映像を見る限りきちんと人間の姿を保っています。それが、母体に影響しているのでしょう。なんとか薬と外科手術でもたせます。両手足の壊死が進んでいるので、場合によっては切り落とすことも検討した方がよさそうですが』
『子供さえ産んでくれれば構わん。手足などなくなろうが、何も問題ないからな』
『そうですね。では、まず壊死が進んだ両足首の切断から……』
声が。声が。声が。声が。声が。声が。
『くそ、なんてことだ……北側の連中も同じことをしていただと……!?』
『モンスターどもが押し寄せてきます!しかも、我々が放ったモンスターもコントロールできず……』
『くそ、両陣営滅茶苦茶じゃないか!どうするんだ、一体どう落とし前をつけるんだこれは!?』
『いくつかの機体はまだ制御ができていません。封印するしかないと思われます。しかし、それでは戦力が足りず……』
声が。声が。声が。声が。声が。声が。 声が。声が。声が。声が。声が。声が。
『くそ、くそくそくそくそくそくそ!やむを得ない……試作品の機体だけで、どうにか街を守るしかない。これでは戦争どころじゃない……!』
『所長、緊急連絡が!……両国大統領が、緊急会見すると。恐らく、一時休戦することになるのでしょう。こんなにモンスターが溢れてしまっていては……』
『あの忌々しい北側の悪魔どもと手を組まなければならないとは……だが、モンスターどもを一層できるまでは……!』
最初のコメントを投稿しよう!