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上官たちは、だからサラたちを処分したのだ。前世の記憶が蘇れば、紛れもなく自分達を恨み、牙剥くことがわかっているからこそ!
「……モンスターの正体は……なりそこない、だ」
イリーシュアとして、全部見ていた。
エンジェルという名の兵器を作り出すため、古代人の子を産まされた女性たち。しかし、ケイシーのような成功作を産めた女はそう多いものではなかった。多くの女性が妊娠中に子供が怪物化し、耐えきれずに腹が破裂して死んでいったのだ。
この世界を襲い、戦争を無理やり終結させたもの。
それは全て、兵器を作るために生み出された子供たちの慣れの果て。いや、中には母親がそのまま化け物になってしまったケースもあったはずだ。いずれにせよ自分達は、同じ境遇で生まれた同胞たちを、この手で殺し続けていたということである。
「エンジェルを、作るための実験の成功率は、高くない。……生まれた古代人のハーフが、俺みたいな人間の姿をしていない時は……モンスターとして生まれ落ちた。場合によっては、母親もモンスターになった。あいつらは……そうやってモンスターになった奴らを野に放ったんだ。それが野生化して、今の状況に至っている……!」
「そ、それ、じゃあ……」
「すまない。ひょっとしたらケイシーのお姉さんはエンジェルの中ではなく、モンスターになってどこかをさ迷っている可能性もある。俺達はずっと……同胞を、この手で殺し続けてきたんだ、人間のエゴのために……!」
最も許せないのは。
罪もない女性の人生を踏みにじり、その子を弄ぶ上、さらにはモンスターが生まれることがわかっていながら世界各国がエンジェルの開発を止めていないこと。
「それでも、エンジェルの開発を止めないのは……むしろモンスターを産み出し続けるため。モンスターがいる限り、戦争は休戦が続く。……共通の敵がいれば、お互い争わなくていいからと」
「そん、な……」
真っ青な顔のトール。
彼も被害者だ、と知っていた。否、ケイシーが知っている、多くの者達が総じて被害者である。サラもマウも、ナンシーも、シュラも、コンラッドも、デンも、みんなみんなみんな。ただ、自分達の地獄をまだ思い出していないというだけで。
「……こんな戦いに、意味などない」
爪が食い込んだ掌が、痛い。
「けれど、一人二人で反旗を翻したところで、世界は変わらない。……なあトール、お前は、どうする?」
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