<3・使っている鍬は光る。>

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<3・使っている鍬は光る。>

「守れまーしたっ!」  にっこにこ笑顔でケイシーとダンの前に座ったのはナンシーである。  現在、至福のお昼休憩タイム。お昼ご飯の時間、とも言う。  ナンシーのおぼんの上には、Aランチことカツカレーと一緒に白いプリンが入ったお皿が乗っていた。 「やー、正直今日は本気でプリン没収を覚悟したわ!なんとかなって良かった良かった。キックしたらうまい具合に、リザード級二体がぶつかって綺麗に消滅してくれてさ!」 「おい、あの迅速な二体討伐はそれかよ!」 「一応、あたしもちゃんと狙ったんだよ?……ぶっちゃけうちの班、新兵の子もいるし、まだシミュレーターでびびってるし。班長のあたしが出来る限り頑張ってあげないと、あの子たちがプリン抜きになっちゃうじゃない」 「そりゃそうかもしれねーけども」  おいおい、とデンが肩をすくめている。これだよなあ、と隣で聞いていたケイシーはため息をつくしかない。  ナンシーの班の成績が悪いのはこれも原因な気がしないでもない。実際、ナンシー一人ならけして実力不足ではないのだ。問題は、彼女が面倒見良すぎて他のメンバーのフォローをしすぎてしまうこと。その結果、彼女以外のメンバーの実戦経験が積まれない、という状況になっているのである。  確かに、彼女の班にはだいぶ年下の子もいるし、妹や弟みたいで可愛いという気持ちもあるのだろう。姉御気質の彼女は昔から年下の子や後輩の面倒を見るのが大好きだと知っている。しかしだからといって、彼らの訓練の機会を過剰に奪うのはいかがなものか。 「ナンシー、君が頑張ってるのは知ってるが。……あまり世話を焼きすぎると、後輩たちの為にならないぞ」  これは言っておくべきか、とケイシーは彼女に箸を向けて言う。今日の自分のメニューはBランチこと塩鮭定食。東の国の名物料理である。 「今は訓練だからいい。でも実戦は、自分一人で判断しなければいけない場合も多い。孤立してしまうことだってある。……たまには君が後方支援に回る勇気も必要だ」 「……まあ、そうだよね。教官にも同じこと言われちゃった。プリンはなんとかしてもらったけどさ」  たっはー、と彼女は背もたれにもたれかかって空を見上げた。赤くて長いポニーテールがふよーんと揺れる。ルビーのような赤毛と赤目を、彼女自身相当気に入っていると知っていた。
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