<23・窮鼠猫を嚙む。>

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 ちゃんとした告白ではない。それはまだ、答えも出ていない段階で出来ない。だから今ケイシーが言えるのは、この言葉が限界だ。 「ナンシーは、俺のことどう思っている?正直に、教えてほしい」  そう言った時点で、ナンシーの好意を知っていると言っているのも同然だ。ナンシーは少し頬を染めて、えっと、と口ごもった。そして。 「好き、だよ」 「どういう意味で?」 「……あたしは、恋愛とか、一応わかってるつもり。だから、多分……そういう意味で、ケイシーが好きだよ。友達思いだし、かっこいいし、優しいし……この間のデートで、ますます、そういう気持ちになった、っていう、か……」 「ありがとう」  まだ、言うつもりはなかったのかもしれない。それでも言わせてしまった自分は、ひょっとしたらとても罪深いのかもしれない。  それでもここで、はっきりさせておくべきだと思ったのだ。これからの選択のために。ナンシーが、自分が、少しでも後悔しない道を選ぶために。 「俺は」  それはひょっとして、ただのエゴなのかもしれないけれど。 「何故サラとマウが、“入院”したまま会えないのか……その理由に、心当たりがある」 「え!?」 「恐らく、今の俺の状態がわかったら、俺も同じ処分が下されるだろう。“入院”させられて、そのまま二度とナンシーやみんなに会えなくなる。そのうち、俺の存在は忘れろと上官に命令されることになるだろうな」 「ま、待って待って待って。それって、どういう」 「真実を全て、知ってしまったということだ」  自分も彼女の正面に座りながら、ケイシーは言う。  言葉は慎重に選ばなければいけない。ナンシーはまだ、サラたちが“殺された”ことも知らないのだから。 「何故サラとマウがああなったのか。俺が何を知ってしまったのか。……俺はその真実を知って、決意した。この戦いに意味はない。否、この戦いを続ければ続けるほど、奴らの思う壺だと。本当の敵を、喜ばせるだけだと」  事前の調査でわかっている。この倉庫は現在からっぽで、ほとんど使われていないし掃除もされていない。防犯カメラも設置されているようでいて、実は壊れたまま放置されているのだと。  だからこの会話はバレていないし、気づかれることもない。  そして部屋の中の会話は、構造上廊下までは聞こえない。よっぽど大きな声で騒げば話が別だが。 「俺は奴らと、戦うことに決めた。だがそれは……この国にとって、敵対行動を取るということでもある。その時点で、俺は世界の敵となる。軍がサラとマウを処分したのは、彼女らが世界の敵になりかねないと判断したためだ」  処分。
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