<24・掉尾の勇を奮う。>

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<24・掉尾の勇を奮う。>

 ああ、本当に忌々しい。何だってこんなバカげたことになったんだ。  クロワはポケットに手を入れて煙草を取り出した。すると、すぐ近くにいた部下のデルゼンが明らかにしょっぱい顔をしてこちらを見てくる。 「中将、この部屋は禁煙です」 「やかましい。この状況だぞ、吸わずにやってられるか!」 「ですが、精密機械もございます。これら全て破損させたら、中将のお給料であっても軽く吹っ飛ぶことになるかと思いますが」  相変わらず嫌なことを無表情で言ってくる女である。くそ、と床に唾を吐き捨て、男は煙草の箱をしまい直した。よく考えたら、ライターを鞄の中に入れっぱなしだった気がする。どっちみち、この場で吸うのは無理だったと悟った。  ちらり、と円卓を囲む別の少将の男がこちらを見る。物欲しそうな眼。ああ、奴もヘビースモーカーだったな、と気づく。疲れた顔といい、吸いたくてたまらないのは彼も同じというわけらしい。 ――ったく、このクソ忙しい時に!  今月末には、家族で南方の島にバカンスに行く予定だったのだ。このトラブルでそれが潰れたらどうしてくれる、と思う。娘たちも、こんな時ばかりパパパパと甘えてくるのだから現金な。父親の金で遊ぶことしか考えていない、頭からっぽな馬鹿娘ども。しかし、そんなバカどもでも、親は可愛いと思ってしまうのだからしょうがない。  今のことも先のことも、考えれば考えるほどうんざりしてしまう。こうなったらもう、ひたすらデルゼン大佐の豊満な胸でも見て癒されておくしかないかと思う。どうせモニターを見ても面白くない難しい情報が並んでいるだけだ。――彼女が愛人であることなど、どうせ上層部の者達には知れ渡っていることだろう。三日前もベッドで可憐に踊って貰ったばかりだ。あの大きな胸と尻が揺れる様は、何度見ても壮観である。次はそろそろ、後ろの穴の調教も始めていい頃合いか。 「報告をお願いします」 「はい」  そのデルゼンは今、夜の色めいた“おねだり”の声など感じさせない、冷徹で冷静な部下の顔をしている。  彼女の言葉に、報告に来た外交官は真っ青な顔で告げた。 「……北の国での反乱ですが……やはり、最初の情報は間違ってなかったようです。あちらのエンジェル部隊……ジナイータ隊、レギーナ隊、ヴェロニカ隊。三つの部隊が、任務中に同時に反乱を起こしたと。しかもイエヴァ隊、キーラ隊も突如として行方不明になったとかで……」 「い、五つもの部隊が同時に、だと!?」  まさかそんな、とクロワは声を上げる。
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