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「? あ、どーも…」
え? 誰? とでも言いたそうに俺とまぁちゃんの顔を交互に見たそいつがぺこりと頭を下げた。一体誰なんだろーね? 俺も分かんない。
だけど俺はお前を知ってるぞ。朝一緒に登校してた奴だ。それしか知らないけど。
爽やかな笑顔と明るい声が戸惑いながら口角を上げて、導き出した答えを遠慮がちに告げた。
「えっと…真珠の、お兄さん?」
だーかーらー、お前は真珠って呼ぶな。せめて家族の前では名前にさん付けしろよ。……って俺は家族じゃないんだった。
気まずい雰囲気はそのままに、まぁちゃんがそいつに近付きコソッと呟く。
「違うよ、ほら、家庭教師してくれてる…」
「ん、ああ…家庭教師って男の人だったんだ」
目の前でこそこそ話されるものだから勘に触って仕方ない。別に居続ける必要もないのに、立ち去ってふたりきりにするのも負けた気がするのでぎこちなく笑顔を作った。
「参考書だっけ? 早く返して子供は帰んな?」
補導される時間だよ、とあくまで私情を挟んでいることがバレないように言ったつもりだったけど、視界の端でまぁちゃんが俺を強く睨む。
それに気付いているのかいないのか、またもや余裕のある笑みを見せたそいつが彼女の腕を軽く引いて言った。
「あ、はい。真珠を家まで送り届けたら帰ります。ご心配ありがとうございます」
にこり。貼り付けたような笑顔は俺の牽制なんて気にしないとでも言うみたい。なんだこいついちいちムカつくな。
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