クズに愛情

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 たぶん今ここで聞いておかないと今夜は眠れない。そんな思いが伝わったのか、言いづらそうに一度こくんと頷く。 「好きな人だよ…今ここに向かってる。貸してた参考書返してもらうの」  ああ、はい。好きな人確定しちゃった。  まあ俺が聞き出したんだけど普通にツラい。だけどそれと同じくらいこんな時間に? 今22時過ぎてるぞ? と心配が混ざる。 「そんなの明日でいいじゃん。同じ学校じゃないの?」 「そうだけど…」  言葉を詰まらせた彼女を見て、早々にその理由を察してしまいまたダメージ。 「(…会いたかったってことね)」  そして相手もきっとそう。両思いだけど、お互い様子を見ながら学校以外でも会えるチャンスを窺っているのだろう。 「(それはしんどい…)」  フラれるよりよっぽど胸にくるのはどうしてなのか。重く暗い鉛を飲み込んだみたいに喉の奥がツンとする。  そしてその数秒後。店員のいらっしゃいませと共に入店してきたジャージ姿の若い男は、まぁちゃんを見るなり瞳を輝かせ近付いた。 「真珠ごめん。お待たせ」  真珠って言った。呼び捨てにすんな。お前誰だよ。俺も何様だよ。  この間、1秒。  一気に巡る思考を抱えつつ、咄嗟に「どーも、うちの真珠がいつもお世話になってます」と先制攻撃がてら挨拶を繰り出した俺はどうかしていた。隣で俺を睨む彼女の顔が浮かぶ…。
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