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「柊ー帰んないの?」
そしてタイミング悪く会計を終えた雪が入り口の近くで俺を呼ぶ。そこはお前、察して帰れよひとりで。
なかなか立ち去ろうとしない俺に、まぁちゃんが「彼女呼んでるよ」と言った。その目は「早く行け」と訴えている。ひどい。
「彼女さん待ってますよ。真珠のことは僕に任せて行ってあげて下さい」
追い討ちをかけるような台詞をしれっと吐いたこいつはたった数分で状況を把握したのか、単なる偶然か、白々しく言ってのけた。
「(…このガキ)」
ああ、もう。なんなんだよ。腹が立つけど、そんな素ぶり見せたらそれこそ負けた気分になるから「あ、そう」と強引に上げた口角がひくついた。
「じゃ、任せるわ。こんな時間に外出させて、万が一にも怪我とかさせないでね。お前に責任とか取れないから」
そう言い残し、不思議そうな表情を浮かべる雪の元へ。やる気のない店員の「ありがとうございました」に見送られ店をあとにした。
がさ、と風に揺れるビニール袋の音を聞きながら冷たい夜風が頬を通り過ぎる。まぁちゃんは今あいつと一緒にいる、その確定情報に溜め息を溢せば、隣を歩く雪が俺を見た。
「好きなの? あの子のこと」
「…は? 何が」
「何がじゃなくて。随分と大人気なかったね」
「…やっぱり? はあ最悪…」
悔しくて悲しくてもうわけわかんない。
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