はじまりの日

1/8
前へ
/8ページ
次へ

はじまりの日

放課後の図書室は、僕の居場所だった。 特に本が好きなわけではないけれど、人気のないこの静かな空間は、僕にとって居心地(いごこち)が良いからだ。 人付き合いが苦手な僕は、よくここに逃げ込んでいた。ここでは人に無関心でいていいから。 図書委員の中でも、毎日来るのは僕だけだ。司書の先生にそれはそれは重宝されて、僕が来ると業務はほとんど僕任せで、いつもどこかに行ってしまう。 授業が終わったばかりはそこそこ生徒が出入りするけれど、波が引いてしまえば僕ひとり──という日も少なくない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加