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その日も、もう利用者も誰もいなくて、僕は返却された本を棚に戻す作業をしていた。
しばらくすると、急に廊下から男女の甲高い笑い声が聴こえてきた。棚から顔を出してみると、同じクラスのやつらが5、6人騒ぎながらちょうど図書室へ入ってくるところだった。
同じクラスだけど、一度も話したことはない集団──僕とは何もかも正反対、いわゆる『一軍』のメンバーだ。
その中の一人が僕を見つけて、パッと手を挙げる。
「あっ、『図書委員』!」
……あからさまに僕を揶揄してるんだろうな。あまりいい感じはしなかったけれど、僕は黙ってカウンターに向かった。
「ねえ、今日の授業で課題でたじゃん、何かおすすめない?」
課題、とは、何かしら本を一冊選んでそれを要約しろ、というものだ。
「おすすめ……って、例えばどんなのがいいの?」
「出来ればやり易いやつ」
そう言われても……とは思ったけれど、とりあえず、この課題に使うと言って、よく貸し出されている本には心当たりがあるから、それを何冊か出してくる。
彼らはそれを手に、またしばらく何やらキャっキャと騒いでいたけれど、やがてまた嵐が去るように出ていった。
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