本編

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 都内にある私立大学。  共通フロアの2階に位置する学内食堂の壁掛け時計は午後2時45分を示していた。 喜多川「おっす。ここだー」  昼時を過ぎ、リノリウム床に長机と椅子が広がっている。昼食時間を大幅に過ぎた、がらんとした食堂で片隅の席にいた男が片手をあげた。友人の喜多川だ。 清水「平然としやがって」  うどんの乗ったトレイを持った男、清水が吐き捨てながら向かいの席に座る。 清水「ったく、しかし……。何が楽しくて昼飯に学食で一杯のうどんを2人で分けなきゃなんねぇんだ……」    清水は割りばしを割り、うどんのつゆをすすった。 清水「あぁ……。染みるね……。学食のうどんでもこの空腹じゃ、ごちそうだ」  清水は味わいながら、しみじみと言った。 喜多川「ちゃんと残しておいてくれよ?」  喜多川は割り箸を弄びながら確認するように訊ねた。 清水「へーい。ってか、お前がもうちょっとなんて粘らなきゃよかっただろ?」  清水はうどんを箸で掴みながら、軽口を叩いた。 喜多川「俺のせいかよ?」 清水「他に誰がいるんだよ」  呆れを含んだ目を向けると、清水はうどんをすすった。 喜多川「あのな、あの時のリーチが当たれば3倍にはなってたんだよ」  喜多川は頬杖をついて、たらればの過去を熱弁した。 清水「はいはい」  清水は口を動かしながら喜多川の言葉を流した。 清水「ギャンブル癖もほどほどにしないと仕送りも止まるぞ。何年目だっけ?」  喜多川の現状を代弁しながら、何の気なしに訊ねた。 喜多川「2留中の2年生」  頬杖をついたまま、淀みなく現状を口にした。プライドの欠片もない言葉は許し合える関係だからこそだろう。 清水「喜多川ってそんなに勉強熱心だっけ? まともにやんねぇと卒業する俺以外に同い年の友達いなくなるぞ」  清水は箸先のネギを口に含むと、あっけらかんと訊く。 喜多川「まともにやってねぇわけじゃねぇよ。レポートの類が嫌いなだけ。あとは出席回数の問題」  頬杖をやめると、喜多川は両手を組み後頭部に回しながら言った。 喜多川「まぁでも、講義で言えば文化概要論とか博物学はおもろいかな」  後頭部に手を回したまま、ピン模様のグリッド天井を見ながら言葉を続けた。 清水「文化概要の担当って、誰だっけ?」  自分の登録していない講義だったこともあり、気になって訊ねた。 喜多川「スズしん」 清水「鈴木親介をスズしんって略すな」  清水はすすったうどんを飲み込むと、社会分野担当の鈴木親介准教授について言葉を返した。 喜多川「いいんだよ。准教授のあいつが公認してんだから。うどん、残ってるんだろうな?」  軽口を叩きながら、丼を覗き込んで訊ねた。 清水「残ってるよ。ってかもう、鈴木に顔覚えられてるだろ」  落単を繰り返す友人の現状を口にした。 喜多川「多分な。知らんけど」  喜多川は再び頬杖をついて、無関心そうに視線を右へやった。  外の掲示板に、深紅と深緑のデザインをしたフライヤーが見える。 喜多川「そういえば、この前スズしんと一緒に飯食ったな」  喜多川は再び視線を清水へ戻すと思い出したように口を開いた。 清水「へぇ。珍しい。お前が飯食うだけの金を持ってるなんて」  常に薄い喜多川の財布を思い出しながら言った。 喜多川「そこかよ。財布に金は入ってなかったけどさ、スズしんがおごってくれて」  ため息混じりに言葉を返すと、わずかにしたり顔になった。 清水「何食ったの?」 喜多川「天ぷらそば。学食の。うどん残ってるよな?」 清水「残ってるよ。でも学食のそばをおごってもらっても、なんの特別感もないだろ」  清水は構わずにうどんをすする。 喜多川「俺は美味しく食べたよ。ってか、意外なことがわかった」  頬杖をやめて腕組をすると口元を片方だけ上げて言った。 清水「何が?」  あっけらかんと訊ねた。 喜多川「スズしんって、そばアレルギーなんだってよ」 清水「想像以上にどうでもいい話だった」  清水は先ほどよりも多めの量を箸でつかむと一気にすすった。 喜多川「アレルギーがでると、肌荒れだったり痒みが止まらなかったりするらしいぜ」 清水「そばアレルギーの話は求めてないから」  うどんを咀嚼しながら、清水はアレルギー話を一蹴した。 清水「ってかさ、生産性のない話ばっかしてんなよ。お前頭いいって評価されてんだから」  清水はうどんを流し込むようにつゆをすする。 喜多川「えっ? そうなの?」  喜多川は間抜けな反応をした。 清水「なんだ知らねぇの? レポートの評価とか研究室の教授方から結構言われてるんだぜ? 『真面目で発想力とか高いしプレゼン能力も高いけど、肝心なところで見切り癖や提出回数が問題だよな』って」  清水は再びつゆをすすった。そして言葉を続ける。 清水「レポート提出や出席回数だけなんとかすりゃ、ちゃんと魅力や能力が伝わるんだからさ。ここぞってところでもうひと踏ん張りしてみろよ」  励ましの言葉を伝えながら、顎でしゃくる。 喜多川「そう言われるのは嬉しいけどなぁ……」  言いながら、割り箸を持ったまま右頬を右人差し指で掻いた。 清水「あと、バイト先の先輩も言ってたぜ。『素直で真面目で仕事覚えが早いけど、ギャンブル癖がたまに傷』だって」  再びうどんを箸でつかんですすり込む。 喜多川「そっか……」  喜多川は静かに頷いた。 清水「だからさ、自分の悪いところを改善して印象変えた方がいいぜ」  言い終わると、再びつゆをすすった。 喜多川「あぁ……。そうかもな……」  呟くように言うと、喜多川の腹が鳴った。 喜多川「腹減った。ってかいつまで食ってんだ? いい加減よこせよ」  喜多川は割り箸を左手に持ち帰ると、右手の人差し指で手招きするように動かした。 清水「あぁ、悪い。はいどうぞ」  口に残ったうどんを咀嚼しながら、丼を差し出した。 喜多川「ったく。……おい、ちょっといいか?」  喜多川は丼を受け取り、中身を覗くと清水に声をかけた。 清水「何?」  清水はキョトンとしながら反応した。 喜多川「ちょいと訊くけどお兄さん。これが半分かい?」  喜多川は割り箸で丼を差しながら訊いた。 清水「バカなこと訊くね。どう見ても半分だろ」  言いながらプラコップの冷水を一口飲んだ。 喜多川「うどんが2本ぽっち、泳いでるだけだぞ!?」  喜多川は目を見開き、割り箸を振って抗議した。 清水「さっさと食っちまえ」  一蹴すると、再び冷水を口に含んだ。 喜多川「2本ばかしでも食うけどさ……」  喜多川はしょげた顔で割り箸を割ると、静寂に近いほどのすする音をたてた。 喜多川「食った気しねぇ……。残るのはつゆだけだ……」  さっきよりも悲しげな顔で言うと、うどんのつゆを飲み干した。 喜多川「もう終わった……。ますます腹減った……」  丼をトレイに置きながら、満たされない腹を左手でさすった。 清水「はいはい。空いた丼返しとくからな」  あしらいながら、空の丼が乗ったトレイを引き取った。 喜多川「これじゃあ、学校前のそば屋で食ってた方がマシだぜ……」  暗く呟き、空腹の体に少し力を入れて立ち上がった。満たされない腹が暗い思考を引きずらせる。 清水「うどん、ご馳走様でしたー」  喜多川の嘆きを流しながら、清水は返却口に丼とトレイを返し、調理場へお礼を言った。 清水「悪いけど、俺もう出るぞ」  清水は席へ戻ると、黒色のリュックを背負いながら喜多川に声をかける。 喜多川「あっ! 思い出した」  清水が去ろうとした時、喜多川がハッと声を上げた。 清水「何を?」  平然と訊ねた。 喜多川「この前そば屋で一緒に飯食った時、立て替えたろ。天ぷらせいろのやつ。代金返してくれよ」  右手の指を前後に数回動かし、返金を催促した。 清水「あぁ、そう。いくらだっけ?」  財布を取り出し、金額を訊いた。 喜多川「たしか、1500円」 清水「1500円かぁ……。やべっ、小銭しかねぇや。全部100円になる感じ。細かいんだけどいい?」  清水は財布を取り出すと軽く上下に振って小銭を確認した。 喜多川「仕方ねぇな。いいよ」  喜多川は一つ息をついて同意した。 清水「じゃあ、手出してくれ」 喜多川「ほい」  言われると喜多川は右手を出した。 清水「えっと、1,2,3,4,5,6,7,8」  清水は100円玉を喜多川の手のひらに数えながら乗せていった。その時、 清水「あっそうだ。一昨々日って何日の何曜日だっけ?」  突如、日にちを訊ねた。 喜多川「えっ? 一昨々日って3日前か?」  突然の問いかけに喜多川は聞き返した。 清水「そう。3日前」  わずかに口角を上げて、静かに頷いた。 喜多川「3日前は確か、9日の水曜日だけど」  視線を天井に向け、思い出しながら言った。 清水「あぁ9日の水曜日か。忘れてたぜ」  何度か頷いた。そして、言葉を続ける。 清水「えっと、9枚までいったから、10,11,12,13,14,15っと。  清水は残りの金額を数えながら支払った。 清水「んじゃ俺行くわ」  数え終わると清水は即座にその場を去った。 喜多川「はいよー。またなー」  喜多川も言葉を返すと、2人は別れ、食堂を後にした。  その日の夜。  自宅である安価な学生アパートの一室に戻った喜多川は、日課であるパチンコ終わりに財布の整理をしようと、小銭をテーブルへ広げた。 喜多川「いや、小銭多いな……」  木製ローテーブルに広がった小銭を見渡して呟いた。 喜多川「あっ、清水から立て替えの金、返してもらったのか」  思い出しながら呟くと、小銭を数え始めた。 喜多川「えっと、全部で1400円だな。ちゃんと……」  言葉を止めると少し考える表情になった。 喜多川「……あれ? おかしくね?」  わずかな違和感が湧き、喜多川はもう一度確認した。 喜多川「……1400円。でも金額は1500円で、昼間はちゃんと1500円あったよな……」  ゆっくりと両手で数えながら、懸命に昼間のことを思い出した。 喜多川「えっと、清水に数えてもらいながら、払ってもらったんだよな。1,2,3,4,5,6,7,8と来て……。ここで3日前の日にちを聞かれたんだよな……。で、9日水曜日って答えて、100円が9枚あるから、1000……」  喜多川は自分の両手で数えた指を見ながら、停止した。 喜多川「1000円の時は100円が10枚だろ……。なのに900円ってことは、100円足りないってことだよな……」  徐々に思考が戻り始め、喜多川は金額が足りないことに気づいた。 喜多川「やりやがったね。あいつ、100円ごまかしたのか。食えない奴だねぇ……」  苦い顔をしながら呟くが、すぐさま何かを思い出すような表情に変わった。 喜多川「でも、こんな感じで誤魔化されるって聞いたことある」  そう言うと、部屋の壁際にある棚からファイルを取り出す。 喜多川「確か、何かで習った気がするんだよな……」  ページをめくりながら思案する。やがて目当ての資料が出てきた。 喜多川「あぁ、これだ」  受講した文化概要論の資料には、落語の演目である『時そば』・『時うどん』の概要や歴史が掲載されていた。 喜多川「要は時間を聞いて会計をごまかすって話だろ」  満足したのか、喜多川はファイルを閉じて棚に戻した。 喜多川「だとしても、ごまかすならもっと多くごまかせよ……」  ぼやいて、再び言葉を止めると、頭にある考えが浮かんだ。 喜多川「俺もごまかして仕返しすりゃいいんじゃねぇか? そうすりゃおあいこだろ」  喜多川は企む顔をしながら言った。  数日後。  喜多川はわざわざ多めの小銭を用意すると、清水と夕食の約束をし、自身の部屋に招いた。 清水「お湯できた?」  リビングから清水が訊いた。木製ローテーブルの上には、カップそばとカップうどんが1つずつ置かれている。 喜多川「もう少しだな」  キッチンから喜多川が返した。1Kの備え付けガスコンロでは、小さなヤカンが火にかけられている。 喜多川「よし。お湯沸いたぞー」  清水を呼ぶように、喜多川が声を上げた。 清水「はいよー」  喜多川の声で清水は腰を上げると、2つのカップ麺を持ってキッチンへと動いた。 清水「そういや、知ってる?」  それぞれのカップ麺に粉末スープや薬味を準備しながら、清水が話を振った。 喜多川「何を?」  清水の方に顔を向けずに訊ねた。 清水「10分そばの話」  喜多川の方に顔を向けながら言った。 喜多川「何それ?」  喜多川があっけらかんと訊いた。 清水「前にカップうどんを既定の5分じゃなくて、10分待って食べるって話題になったじゃん? あれのそばバージョン」  清水は、少し前に話題になったカップ麺の食べ方を交えながら話した。 喜多川「それうまいの?」  喜多川は少し懐疑の視線を向けた。 清水「えっ? 知らねぇの? めっちゃうまいって話題!」  清水はゴミ箱にかやくのゴミを捨てながら、したり顔で言った。 喜多川「へぇ。食べてみたいかも」  喜多川はそれとなく興味があると反応をした。 清水「じゃあ、今やってみれば?」  清水は手を洗いながら、カップそばを顎でしゃくる。 喜多川「そうだな。作り方って分かんの?」 清水「あぁ。分かるよ。ちょっと後ろごめん。先にお湯入れるわ」  清水はヤカンを手にしながら言った。 喜多川「危なっ……」  移動するヤカンを避けながら、喜多川は粉末スープのゴミを捨てた。 喜多川「んで、作り方教えてくれよ」  喜多川が手を洗いながら呟く。 清水「あぁ、了解。……お湯入れ完了」  ヤカンを置くと、清水が口を開いた。 清水「じゃあ作り方についてだけど……。まず、規定通りにお湯を入れて、そこに半分にしたかき揚げを入れる」  喜多川は説明された作り方を実行した。狐色に近いつゆに即席麺のそばが浸かり、かき揚げが浮く。 喜多川「よし、入れたぞ。あとは?」  実行した後、確認するように訊いた。 清水「あとは10分待つ」  キッチンの壁に背中を預け、腕組みをしながら言葉を返した。 喜多川「これだけ? こんなんでうまくなるのか?」  再び疑いの目を向けた。カップ麺とはいえ、美味しく食べたいものだ。 清水「まぁ待ってみなよ。テーブル持っていくな」  清水が壁から体を離すと、2つの容器を持ってリビングへ移動した。喜多川も後に続く。  つゆの香りが漂う。かき揚げの油の香りが、食欲を掻き立てるように鼻腔へと届いた。  やがて、スマホのアラームが10分経過したことを知らせた。 清水「できた。よしっ、食べてみるか」  コンビニでもらった割り箸の封を開け、両手で割ると清水は10分うどんを食べ始めた。 喜多川「じゃあ、俺も食べるか。いただきます」  喜多川も後に続いて箸を割ると、10分そばを食べ始める。 清水「うまい?」  即座に口を開いた。 喜多川「まだ口付けてねぇから。とりあえず、つゆから食べよう」  即座の問いかけに喜多川は言葉を返すと、容器に口をつけてつゆを味わう。 清水「どう?」 喜多川「……うん。つゆはうまいな。既定のお湯の量だからと思うけど」  静かに頷いてつゆを味わい、感想を述べた。 喜多川「問題はそばだけど……」  割り箸でそばをつかみ、息を吹きかけてそばを冷ます。そしてすすった。 清水「どう?」 喜多川「……うん。コシがなくて、すぐ切れる。特別まずくはないけど、うまくもないな」  再び静かに頷き、感想を述べた。さほどの美味しさがなかったからか、言いながら小首を傾げた。 清水「10分うどんはうまいぞ」  対照的に清水は、無関心そうにカップうどんをすすった。 喜多川「人の話、聞いてねぇな。まぁ、かき込むみたいに食べるならいいかも……」  少ししかめっ面をして、再び何度か小首をかしげながら、喜多川はそばを食べる。 清水「かき揚げはどう?」  清水に言われて、先入れと後入れのかき揚げを食べ比べた。 喜多川「うん……。後入れの方がうまいな。先入れは風味がない。おじやみたい」  つゆをもう一口すすると、テーブルに容器を置いた。 喜多川「総評すると中途半端……。『賞味期限切れのプリン』みたいな。『今も美味しいけど、期限内に食べればもっとおいしい』みたいなね……」  不満そうな表情でしみじみと言うと、何度か頷いて、静かに納得した。 喜多川「俺は好きじゃないや。もういらない……」  頷き終わると、容器を遠ざけるように前に押し出した。 清水「あっそう……。もったいないからもらってもいい?」  清水はしたり顔をしながら訊いた。 喜多川「あぁ。あげるよ」  喜多川は箸と容器を投げ出した。清水はしたり顔のまま、うどんとそばを空腹に送る。 喜多川(腹減った……)  空腹を抱えながら喜多川は清水の食事姿に視線を向けた。 喜多川(腹は満たされないけど、金の面では満たしてもらうからな……!)  したり顔とわずかに鋭い視線になりながら、喜多川は強い決意を噛み締めた。 清水「ってかさ、この前金返したけど、お前も金返してよ」  刹那、待ち侘びた瞬間が訪れ、清水が口を開いた。  喜多川「なんのやつ?」  喜多川は口角が上がるのをこらえながら、平然と訊いた。 清水「2日前に一緒に行ったそば屋で立て替えたろ? 上海老せいろのやつ。レシートもあるぞ」  清水は割り箸を置き、財布からレシートを取り出して言った。 喜多川「いくらだっけ?」  喜多川はこらえ続けながら訊ねた。 清水「1500円。よく行くんだからわかるだろ?」  清水は咀嚼しながら言葉を返した。 喜多川「いや分かってたよ。ごめん、ちょっとふざけただけさ」  軽口で謝罪すると、財布を取り出した。 喜多川「あぁ、悪い。小銭ばっかだ。全部100円になっちまう」  財布を上下に揺らしながら用意した小銭を確認した。 清水「人のこと言えねぇけど、お前もかよ」  一連の動作を見ながら、清水が反応した。 喜多川「払うから手出してくれ」 清水「はいよ」  喜多川は口角を上げ、したり顔を表に出しながら払い始めた。 喜多川「いくぞ……! 1,2,3,4,5,6,7,8。清水、今何時だっけ?」  嬉々とした声でここぞとばかりに訊ねた。 清水「夕方6時だ」 喜多川「7,8,9,10,11,12,13,14,15!」  冷静な返答に、喜多川は最後の100円を捨てるように払った。  同時に清水がしたり顔で訊ねた。 清水「今どんな気持ちだ?」  訊ねられ、先ほどと同様に吐き捨てるように言葉を口にした。 喜多川「一杯食わされた気分だ」 【終】
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