閑話『恋は盲目』

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 みさきさんとは、段々と一緒にいる時間が少なくなっていった。  はじめは、なんとなく会話が続かなくなったような気がするな、という違和感だけだった。  気のせいだと思ったし、一緒にいる時間が長すぎて、話すことがなくなることだってあるよねと、気にしないようにしていた。  でも、それでも段々と気付くようになっていった。  みさきさんが、私と一緒にいるとき、早く帰りたそうにしていること。友達や、バイト先に呼ばれたと言って、解散になることが増えた。  帰り道、今まではギリギリまで一緒にいたのに、どこかで私と離れようとすること。「俺はちょっと飲み直してから帰るよ」なんて言われて解散になるけれど、それなら着いて行きたいのに。そう言おうとしても、その隙を与えてくれない。  撒かれている……そんな風に、感じてしまっていた。  みさきさんが、大学で私のところにふらっと現れることも、なくなっていった。連絡が来ることも、遊びに誘われることもなくなった。  なぜなのか、何がきっかけだったかなんて、このときは全然わからなかった。わからなくて、寂しくて、認めたくなかった。気のせいだと思うようにしていた。  だから、私は考えて考えて、何日間か空けるようにして、それから彼に連絡した。週一で誘うくらいなら普通かな、とか。しばらく連絡しなかったら、久しぶりに会ってくれたりするかな、とか。意味のないことを考えて、間をおいて、連絡をした。返事はすごく遅かった。  やっと会う約束ができたと思っても、すぐ解散になってしまう。私はできるだけ長く一緒にいたくて、引き留めてしまったり、気を引こうとしてしまったりして……そんなことをしていたら、逆効果だった。  段々、彼は私を見なくなった。  誘いを断られることも多くなった。  それでも、何かすれ違ってしまっているだけだと、話せばいつかまた戻れるんだと、私はいつまでも受け止められずに、縋ってしまっていた。 「あ……みさきさん!」  たまに図書館で見かけて、話しかけることがあった。  近くまで寄っていくと、やっとみさきさんはこちらを向く。 「どうしたの?」 「いえ、何もないですけど……話したかったから」 「そっか」  本棚を見つめるみさきさんの隣で、私は黙って立っている。  彼は私を見ない。  バリアを張られているような気がした。 「何の本を探してるんですか?」 「んー、別に、探しているわけでもないんだ。何かあるかなって」 「あ~……そういうときも、ありますよね!」  彼の横顔を見つめる。  目が合わない。笑わない。  みさきさんが、違う人のように見える。
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