強まる雨足

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強まる雨足

今朝家を出ると雨粒が綺麗に舗装されたコンクリートに飛沫をまき散らしていた。 一昨日新調した傘を手に、僕は土砂降りの雨が作り出す喧騒とは無縁な静かな世界に足を踏み入れた。 踏み込んだ右足は大きな水たまりの先端に触れた。 煤けたスニーカーはいとも簡単に水を通し、後には気持ちの悪い足の濡れた感触だけが残る。 「はは…」 少しその場に立ち止まると頭が冷えたのか、あまりのくだらなさに苦笑いがもれた。 それから駅までの道をのんびりと歩いた。 道路脇には車にひかれ内臓の飛び出た平面な蛙の死骸があり、空き地には豊かな緑が生い茂って貪欲なまでに好き勝手枝を伸ばしていた。 あの貪欲な蠢く植物どもは今にも隣家まで食い尽くしそうで不気味な雰囲気がある。 ひどく有機的で生命の息遣いを感じた。 とても美しいと思った。 何かがずっと頭にこびりついて離れなくて、僕は素直にその感情を受け入れることを拒んだ。 「おっはよー!」 薄っぺらい静寂は破られた。玲さんは僕を見つけると瞬時に脇の側まで距離を詰めてきた。 彼女の吐息が胸にあたる。 相変わらずニット帽を着けて赤い髪をした玲さんは人工的ではない血の気の通った白い肌をしていた。 ここまで走ってきたからだろうか。 玲さんは少し息が上がっていて、なんだかお風呂上がりのようないい香りがした。
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