2 小田切

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「……俺、センセーが好きだ。もちろん今付き合ってなんてもらえないの分かってる。俺が成人してからでいいから。……だから、今キスだけでいいからしてくんないっすか。約束くれたら、大人しくしてる。学校も来る」    ――――赤沢樹。1年A組。  俺が今担任持ってるのは2年生で、俺のクラスじゃない。  A組ってのは特別進学クラスのトップで通称特A、つまり学年で一番頭いい集団。  こいつは、当初はその特進の中でも上の方の成績で入って来た生徒だった。  兄姉も優秀だったし学校側も期待していたが、入学式に金髪で来たり、担任が名前を呼ぶ入学許可で呼ばれても無視したり、初っ端から問題ありありで。  特Aといっても素行に問題ある生徒は時々いるけど、今まで居なかったタイプに特Aのベテラン教師も辟易してた。  学年は違うけど地理の授業は持ってたし、何か助けになればと思って放課後図書室に居たこいつに声かけたのが運のつき。  なぜか慕われるようになり、お勧めの本教えてやったり貸してやるようになり、今に至る――――。 「えーと……」  こういう時は、教師としてはまともに取り合わずにあっさり流した方がいいと分かってるのに言葉が出て来ない。  正直これまでも、女子生徒から告白されたり、ほのめかされたことはあった。  けど、ここまで真っ直ぐ、真っ正面から告白されたのは、生徒に限らず俺の人生で今までなかった。  もう7年くらい前に別れたけど、大学の時から教員1年目まで付き合ってた彼女も、友達からなんとなくって感じだった。
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