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なぜ俺がセンセーとクリスマスデートすることになったかといえば、それは
「センセー。トリックオア」
「はいこれ」
お約束の台詞を言い終わる前に水色の袋を突きつけられた、10月31日放課後の社会科準備室に遡る。
「……なんすか、これ」
「お菓子」
袋の口は金の針金で縛ってあって、見たところ100均のラッピングで自分で包んだ感じ。
「いや、あの、話」
結局1週間くらい入院させられて誕生日はうやむやになったし、話せるタイミングもなかったから来たってのに。
「うん。だからそれ持って帰って」
「や、だから」
話してる最中、ドアがノックされて
「小田切先生、トリックオアトリート」
下級生の女子が入って来ると
「はい、あるよ。じゃ、もらった人は帰って」
笑顔で追い出された。
なんだその扱い。
わざわざラッピングしてくれたって、こんな菓子なんか要らねーっつの……。
廊下歩きながら手元の袋を改めて見ると
「……ん?」
何かカードみたいのが入ってて文字が透けてるのが見えた。
その場で開けてみると、チョコレートとクッキーの他に袋と同じ水色のカード。
電話番号らしい数字と、メッセージアプリのIDらしいものが書いてあった。
多分そういう意味なんだろうと思って早速メッセージ送ると夜に返信が来た。
『今ハロウィンも定着して放課後もらいに来る生徒増えたし、そもそも職場で出来る話じゃないから、どっちにしても個人的に連絡取った方がいいと思った』
『どっちにしてもって何?』
返事が来るまで、少し間があって待ってると
『あの事故のあと目覚めた時には結婚してくれとか言ってたけど、気変わってるかもしれないし、単に混乱してただけかもしれないから』
速攻アプリ通して電話するとすぐ出た。
「何!?結婚って」
「……まさか覚えてない?」
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