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その駅で改札を出て、きょろきょろしていると
「赤沢」
後ろから声かけられて、振り返ったら
「……え?」
見慣れないカッコのセンセーが苦笑する。
「なんだよ。その顔」
当たり前だけどいつもはワイシャツにスーツだから、ダウンコートの襟から紺のタートルネックが覗いてるのも十分新鮮なんだけど。
「……眼鏡?」
「ああ。見たことないか」
黒のメタルフレームの眼鏡、眉間に押し上げてセンセーは言う。
「普段はコンタクトだけど、休日は面倒だから結構これで居ることが多くて。あと、今日は軽く変装も兼ねて。まあ、ここで誰に会うこともないだろうけど」
笑うとなんかドキッとする。……頭整理しよう。
センセーはどっちかっていえば少しタレ目気味で、それが柔らかい印象になるんだか一部女子にも人気あるんだけど。
そこに黒の眼鏡掛けるとちょっと硬い感じになって、なおかつ普段はきちんと整えてる前髪ラフに下ろしてると大学生くらいに見えなくもない……。
「……センセー、眼鏡で学校来ないで」
「は?いや、眼の調子悪い時はこれで行く時も」
「じゃ、なるべくやめて」
「なんでだよ」
「眼鏡フェチとか需要あったら困る」
「バカなこと言ってねーで行くぞ」
とセンセーはコートのポケットに両手突っ込んで歩き出す。
後について外に出ると、駅前はバスロータリーがあり、そんなに大きな駅じゃないけどファーストフードやファミレス、居酒屋なんかがある。
「腹減ってるか?」
センセーが振り返って言った。
「えーと、朝は食べて来たけど、別に今でも食えるくらい?」
「そしたら、なんか食ってくか。クリスマスだし」
「っす」
もちろん、俺は奢られに来たわけじゃないので自分の分は自分で出すつもりだった。
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