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ビルの2階にあるファミレスに入って、タブレットで注文済ませて、何気なく窓の外を見てふと思った。
「センセーって、いつからここに住んでんの」
「えっと……大学入った時からだから、もう14年くらい?」
「ずっと?」
「アパートは途中で引っ越したけど、この駅は同じ」
「なんで引っ越したの」
特に意味もなく聞いたんだけど、センセーはちょっと嫌な顔したように見えた。
「あ、言いたくなければ別に」
「……彼女に振られたから。大学生向けのワンルームだったから仕事始めて手狭になったのもあるけど、まあそういうこと」
え、それはいつなんで、まさか同棲でもしてたのかって聞きたかったけど、さすがに言えなかった。
でも、どうしても気になって
「その人って大学生ん時から付き合ってたの?」
これだけと思って聞くと、センセーは俺見て言った。
「それ聞きたい?」
「え。……」
「俺はいいけど、お前があんまりそういう生々しい話聞きたくないかと思ったんだけど」
「……それもそうだけど、知らないのもなんかモヤモヤする」
「……大学3年の時から教員になって1年目までだから、実質そんなに長いこともないけど」
どっちから告白したのか、とかすっごい気になったけどこれ以上は聞いたらダメだと思った。
「あ、じゃ、これは聞いていい?センセーはなんで先生になったの」
一瞬、間があって。
プライベートで会った途端に質問攻めはさすがにウザいと気づいて反省したけど、答えてくれた。
「父がそうだったから」
「お父さん?」
「だった、っていうか今も現役だけど。……働き方改革でだいぶ変わったけど、昔は運動部の顧問なんて休日なくって。母も祖父母も文句言ってたし、俺も、家族旅行でも父は後から合流したり、どっか連れてってもらう約束も出来なかったり、小さい頃はすごい嫌だったけど。でも自分が中学生高校生になって、ちょっと父のことが分かって」
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