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「センセー、誕生日いつ?」
「……3月2日」
「じゃあ、俺何か買ってくるから」
「来年のその日はお前らの卒業式なんだが?」
あ……。
「まあ、教員なってからは年によっては卒業式だから。自分が担任の年は花束もらうのがプレゼントかな」
「あー……」
「つっても、デカくて置き場所ないし、そもそも花瓶もないから実家持ってくけど」
「そうなの?」
「大きな声じゃ言えないけど、お前電車通勤であんなデカい花束持って帰るの結構罰ゲームだからな。ラメ吹きかけた花束の時は礼服キラッキラになったし」
「……っぶ……」
「笑い事じゃねーよ。マジ卒業式とか、あと修学旅行とかスキー合宿で荷物持ってく時は車通勤の先生羨ましいわ」
「じゃー、俺が普通免許取ったら送り迎えしてやるよ」
「車は」
「親ローンで買えるだろ」
「そんな車乗れるか」
センセーはショートケーキの残りを口に運ぶ。
俺はもう食べ終わってて
「そっか。俺のチョコレートケーキ一口あげれば良かった」
「いーよ。別に。お前がこっち食いたいならやるけど」
「や。大丈夫っす。また今度」
「今度ねえ……」
「え、ダメ?」
「……ダメなら最初から家連れてきたりしない。ダメだって言っても、お前なら一度来たらもう場所分かるだろ」
「俺、犬?」
「変わんないだろ」
センセーはケーキ食べ終わって、下に敷いてある紙でフォークを拭う。
「別に、お前が来たければ来ればいいし。お前が気持ち変わってないなら、俺はもう断るの諦めたから。勝手にしろ」
「……それって……」
コーヒー飲んで、センセーは皿持って立ち上がる。
「ほら、お前のも」
手出されて、皿貸せって意味なのはわかってたけど、その手を握った。
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