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「……あき、投げる事ないじゃん。壊れる」
「……、知るか」
少し男を睨んでやればほんの少しだけ、たじろぐも視線を逸らしてぶっきらぼうに呟いた。
その後も行為は続き、ようやく終わった頃には全身汗まみれ、声の出し過ぎで口は乾燥しているし喉も痛くなっていた。
「あき、私にもちょうだい」
「…、おう」
男は情事が終わると処理を済ませてベッドを離れると、タオルと飲み物が入ったペットボトルを持って戻ってきた。
渡されたタオルで汗ばんだ体を拭いている最中、冷たい飲み物を美味しそうに飲む男に私もねだった。
渋谷暁斗。
それがこの男の名前。
私とあきは、付き合っていない。
ただの幼馴染であり、ただの、セフレだ。
それ以上でも以下でもない。
物心ついた時から一緒に居て、何をするにもあきと一緒。
小中高全部一緒だった。
そして今通っている大学も。
友達にはよく揶揄われてた。
そんなに一緒にいるのに何で付き合ってないの、とか。
本当はずっと好きなんでしょ、とか。
そりゃあ、好きは好きだよ。
好きじゃなかったらこんな幼少から成人するまで一緒に居ない。
ただ、それは恋愛の好きではないってだけ。
だってそうでしょ?あきとは彼氏彼女なんて軽い関係じゃない。家族みたいなものなの。
……まぁ、そんな風に思っているくせにやる事はやってるんだけれど。
だけど、あきも私と同じ気持ち。
私とあきは似た者同士。
これはお互い合意の上だから何の問題もない、私たちだけの秘密。
あきには好きな人が居て、私にも好きな人が居る。
お互いその恋がきっと叶わないものだから、こうして慰め合ってる。
でもそれでいい、他の人には言えない事でも、あきになら言える。共有できる。
私たちはお互い都合のいい関係なのだ。
「……うわ、最悪」
「何?」
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