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「そうだよな。洋子ちゃんがあの四菱商事の社長の娘だって知っていたら、俺がアタックしたんだけど」
「あはは、そうだったか。災い転じてなんとやらだな。でもな、そういうお前だって、好きな芳江ちゃんと結婚できたんだから良かったじゃないか」
そこに「よう」と言って、竹岡がやってくる。
「遅くなってすまん。金田」
「おう、来たか竹岡。俺たちもちょっと前に来たところさ」
「そうか。それで今日は、金田。お前は幹事だから分かるが、後は小池が来ると言ってたよな」
「おう、小池は少し遅れるようだ。なんだか三回忌だとか言ってたから」
「そうか、それに」
竹岡が、怪訝そうに佐多を見ているのに気付いた金田が、「おっと」と言ってから、続ける。
「そうか、お前も大分しばらくだよな。佐多だよ、佐多」
「何だって、佐多だと。佐多って、ちょっと待てよ、同級生というより俺の義兄じゃないか」
竹岡は、佐多の妹と結婚している。
「そうともさ。つい先日、こっちにやって来たのを知ってな。みなに会うのも久しぶりだと思って、来てもらったのさ」
金田は、二人の顔を見比べてから竹岡に告げる。
「お義兄さん、すっかりご無沙汰して申し訳ありません。言い訳にもなりませんが、義兄さんもご存知の通り、仕事でドイツやイタリアなど駆け回っていて、うちに帰るのも年に数回という暮らしが長く続いたもので、すいません」
竹岡は神妙な顔をして佐多に謝る。
「ま、いいってことよ。妹が時々泣き言を言いに来ていたようようだが、うちのやつがなだめて、いっしょに食事などしていたようだ」
「そのようでしたね。ありがとうございます」
「それで、あのパンテ…」
と言いかけたところに、「遅くなったな」と言って、小池がやってくる。
それで、佐多の話も中断される。
四人揃ったところで酒の勢いも一層増して、昔話に盛り上がる。
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