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「あなたを、愛してる……?」
俺がその本を手に取ったのは、本当に偶然だった。
あまり勉強が得意ではない俺。
母子家庭だったので高校を卒業したら就職するつもりだったし、もう内定も貰っていたので勉強する必要は、毎学期の中間・期末試験のためだった。
この日も、友人と期末試験の対策を立てるために図書館に来た。
赤点さえ取らなければいい俺と、どうしてもいい点を取って受験への足掛かりにしたい友人とは、入館当初より温度差があり……。
「少しだけ集中したいから、お前、暇なら帰ってもいいぞ。」
などと言われてしまう始末。
しかし、せっかく一緒に来たのだから、勉強後はカラオケやファミレスに行こうと思ってたものだから、適当に読みやすい本でも見繕って時間を潰そうと思っていた。
「マンガは……あるかな?」
俺にとって、読みやすい本=マンガだったので、そんなコーナーはないかと図書館の中を歩き回っていた。
そんな俺がたどり着いたのは、絵本のコーナーだった。
その中の1冊に、俺の目は釘付けになった。
青空の写真の拍子。
他に飾るような言葉はなく、中央に『あなたを愛してる』と一言だけタイトルの入っているその本。
気が付くと俺は、その本を手に取っていた。
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