あなたを愛してる

1/17
前へ
/17ページ
次へ
「あなたを、愛してる……?」 俺がその本を手に取ったのは、本当に偶然だった。 あまり勉強が得意ではない俺。 母子家庭だったので高校を卒業したら就職するつもりだったし、もう内定も貰っていたので勉強する必要は、毎学期の中間・期末試験のためだった。 この日も、友人と期末試験の対策を立てるために図書館に来た。 赤点さえ取らなければいい俺と、どうしてもいい点を取って受験への足掛かりにしたい友人とは、入館当初より温度差があり……。 「少しだけ集中したいから、お前、暇なら帰ってもいいぞ。」 などと言われてしまう始末。 しかし、せっかく一緒に来たのだから、勉強後はカラオケやファミレスに行こうと思ってたものだから、適当に読みやすい本でも見繕って時間を潰そうと思っていた。 「マンガは……あるかな?」 俺にとって、読みやすい本=マンガだったので、そんなコーナーはないかと図書館の中を歩き回っていた。 そんな俺がたどり着いたのは、絵本のコーナーだった。 その中の1冊に、俺の目は釘付けになった。 青空の写真の拍子。 他に飾るような言葉はなく、中央に『あなたを愛してる』と一言だけタイトルの入っているその本。 気が付くと俺は、その本を手に取っていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加