3、始まり

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 まずは王都から……  わたくしは様々な場所へ行き、チェスの無料教室を開きました。修道院、教会、孤児院、図書館、博物館、美術館……まだまだ、これでは庶民まで下りていません。わたくしは町の酒場と呼ばれるような場所や街頭などでも、チェスを教えました。  大活躍したのが、絵で意味がわかるようにした解説書です。腕に覚えのある妹が協力してくれました。これによって、文字を読めない庶民でもチェスを楽しめるようになりました。  よその若い娘たちがデビュタントを終え、お茶会や舞踏会に興じている間、わたくしはチェスの伝道に力を尽くしていたのです。    夏が終わり、王都に集まっていた貴族たちはそれぞれの地方に帰ります。父は各地方の領主たちに印刷したチェスの説明書を何部も渡し、広めるよう依頼しました。  チェスのルール自体はわかってしまえば簡単です。五、六歳の子でも理解は可能なのですよ。難しいのはゲームの中での駆け引きや戦い方です。シンプルなルールの下でどれだけ能力を生かせるか。地位、経済力に関係なく、いまや誰にでも門戸は開かれています。  チェスの大会の予選は冬に開かれました。そして次の夏、母の開くサロンで決勝戦が行われたのです。
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