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“脅し”の甲斐あってか、大きな揉めごとはなく、日々は過ぎていきました。
態度が悪いため、小競り合いくらいはあります。気の合わない子と生活するノエルの負担は、計り知れません。双子に加害しないかと不安もありました。
手に負えないようだったら、全寮制の学校に入れてしまおうというレオンの提案がたびたび、脳裏をかすめました。
やはり、わたくしはただのお人好しです。善人ではありません。
転機はローランが来て、一ヶ月たったある日のことでした。
特に用事のない日でしたから、レオンとわたくしは大広間でチェスを楽しんでいたのです。双子はお昼寝中でした。
久しぶりの夫婦の対戦は白熱しました。結婚してから、レオンは弱くなったのですが、いやに食らいついてきます。ちなみに、わたくしは大会順位7位を堅持しており、レオンは32位まで落ちてしまいました。
わたくしのほうが、断然強いのですよ。勝利はほぼ確定しているのに、無駄な手を打って引き伸ばしてくるのですよね。そこでチェックする?……っていう。
寂しがり屋の旦那様は、妻とのゲームを是が非でも長引かせたいようでした。そんなね、あなた? 勝敗を決してから、再戦すればいいでしょうに。
週に一回の夫婦の日以外、夜は子供たちと過ごしていますし、王都にいる間は忙しくて、二人きりの時間をなかなか作れません。わたくしだって、最近は睦み合いが足りないと思いますよ? もっとイチャイチャしたいです。
恋人気分を味わいたいのはわかりますけども、それは悪手ですわ。
内心、愚痴っても、下手なチェスでがっついてくる彼はかわいいです。その一方で、出会ったころの知的でスマートな姿が神格化されていきます。昔の彼がこの世のものとは思えないぐらい、神々しい存在として脳内で再生されてしまうのですよ。
もっと、クールな人でしたのに……まったく、子供っぽいんですから。
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