時、満ちる

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「真人が知り合いだったとして、何か疑われるようなことがあるんでしょうか?」 「いえいえ、そうではないんです。何か知っている可能性が高いので、お話を伺いたいだけでして」  折尾は亜紀を安心させるように努めて明るく説明したが、亜紀は親指の爪を噛み、明らかに心配そうな表情をしている。 「名刺をお渡ししておきます。真人さんが帰られたら連絡をください」  折尾がそう言ってその場を去ろうとすると、その背中に亜紀が「待ってください」と声を掛けた。 「葉蒲署からこちらに来たということは、あの事件って」 「ええ。葉蒲署管内で起きました」  答えながら折尾はざわつきにしたがって亜紀に対しての最後の質問をしてみた。 「勝田(かつた)絵里奈(えりな)。被害者女性の名前です。ご記憶には?」  亜紀は下唇を噛んでやや考えたが、首を横に振った。 「いいえ」 「御手洗絵里奈、だとどうです?」  その名前を聞いた亜紀は、目を見開いた。 「なんで? なんであの女と真人が?」  折尾はその質問に答えることはできなかった。それに答えられるのは真人だけだ。
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