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忘れられるユメの中で
「侑芽が殺したのね」
亜紀は夢の中で美しい顔のまま成長した妹と話していた。
「そう。可愛い甥っ子まで玩具にして。忘れていた怒りっていう感情が爆発しちゃったみたい」
小さな映画館。侑芽が亜紀の隣でそう語りながら、スクリーンに映し出された映像を見て笑っている。
「真人ってかわいいよね」
侑芽はそう言うが、亜紀は目を逸らした。息子の男の部分など見たくもなかった。
「こういうことしてるって、お姉ちゃんもちょっとは気付いてたでしょう?」
「そりゃあ、ね。一回私の上に出されたこともあったし。眠ってるふりしてたけど」
「ああ、あったね。ふふふ。お母さんがこんなに美人だと息子は大変だ」
その時のことを思い出した亜紀は、下っ腹にジュンっという僅かな音がしたのを感じた。
「御手洗と真人が繋がったのって偶然?」
亜紀は特別侑芽に聞くわけでもなく、独り言のように口にした。
「そんな偶然、あると思う?」
侑芽が笑う。本当に奇麗な顔だ、と亜紀はぼんやりと笑顔の侑芽を見ていた。
「あははは。きゃははっ」
声を大きくして笑う侑芽の口が少しずつ裂けていく。
「ちょっと、侑芽笑わないで!」
「何よ、面白いんだから笑っちゃうのは仕方ないでしょ?」
裂けていた侑芽の顔が瞬時に元へ戻る。
そして、そのまま病魔に襲われていた頃の侑芽の顔へと変わっていった。
「こんな侑芽を病原菌呼ばわりしたあんな女、生かしておくわけないじゃない、ねえ」
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