そして満面の笑み

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 立ち上がっていたはずの亜紀は、再び映画館の椅子に座っていた。だが、今度はまるで電気椅子のように手足が金属の枷で固定されている。 「感じる?」 「う、うん。感じるよ」 「奥まで入れているけど、わかるかな? ほら」  画面には大きく真人の握りしめたモノが映っている。その右下には小さくマスクをした女の顔。 「わかる。わかるよう」  扉の向こうのその様子が、夢の中で亜紀には手に取るように分かっていた。 「うちの子に何してんのよ!」  亜紀が思い切り扉を叩く。何度も何度も。  その映像から逃げたくても、手足を固定されては逃げようがなかった。  スクリーン一杯に大きく映った扉を蹴破り、絵里奈の部屋の中に飛び込んだのは、現実より醜い浮腫で崩れた顔をした侑芽だった。 「あれ? 違うよ、お姉ちゃん」 「あっ、あああ」 「ちょっと後ろに戻すね」 「あはっ、ははは」
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