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発症
姉派か妹派か。
思春期を迎えた男子生徒たちのそんな噂話が耳に入ってきても、ただ微笑んでその姉妹は受け流していた。
「侑芽か亜紀さんか。男子ってそればっかりね」
中学二年と三年、三神姉妹の妹の侑芽が、同級生の御手洗絵里奈からそうやって羨む心を隠しもせず溢しているのを見ても、やはり侑芽はただ微笑んでいた。
「はあ、いいなあ侑芽は」
絵里奈はそう嘆息して侑芽の微笑みに見惚れた。
「エリィだって可愛いしモテるじゃない。あたしはいつもお姉ちゃんとセットで見られるから。それに、見た目の話ばっかりで、なんかヤダ」
「それは、うん、わかるかも。男子って、胸の大きさとかわざと聞こえるように言ってるよね。この前も三年の男子がすれ違いざまに『ちっせえ』とか言ってんの」
絵里奈がそう口を尖らせて愚痴っていると、侑芽の表情が曇った。
「あ、ごめん。胸の話はヤだよね」
侑芽と姉の亜紀も同様に、絵里奈とは逆でその部分の成長の早さを話題にされるのを嫌っていた。だが、その話は関係ないと侑芽は「違うの」と首を横に振っていた。
「なんか、だるくてクラクラする」
確かにそう言われてみれば顔色が悪いと、絵里奈は侑芽を保健室へと連れて行った。
翌日から数日「風邪らしい」と学校を休んでいた侑芽だったが、回復して登校しても、数日後にはまた体調を崩すということを数回繰り返した。
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