3人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、話が違ぇぞ!」
ネオン輝く夜の神戸、ゼノは息苦しいガスマスクを外し繁華街のビル上を駆けながらイヤホンに繋げた通話相手に苦言を呈していた。
『――どういう事?』
「御影はもう神戸の半グレのとこに居ねぇ! ちょっと前に連れてかれたらしい!」
『そんな、まさか……』
通話先の相手はゼノからの報告に言葉を濁す。御影の消息を辿った結果神戸の半グレに囚われている事だけは明らかだったが、そこからゼノに依頼をしてゼノが神戸へ向かう間に第三者に奪われてしまった。
相手の躊躇いが分かったゼノはビルの屋上から屋上へと飛び移り、一度足を止めると背後から誰も追ってきていない事を確認する。
「しかもさ、御影を拐ったのは『金髪の奴』だって話だぜ?」
レンのチームは神戸でも名のしれた半グレチームで、廃ビルを根城としていたがその武力や監視体制から安易に他者が手を出せるような場所でも無かった。
ゼノだからこそ今回も入り込めたようなものであり、ゼノと同レベルの侵入が可能な存在といえば思い浮かぶ相手はひとりしか居なかった。
『まさか、あの子が』
「そうとしか考えらんねぇだろ。お前、暫くアイツと連絡取れてねぇって言ってなかったか」
ゼノの言葉に通話相手は息を呑む。該当の人物と連絡が取れなくなって久しい、彼ならば厳重な監視体制が敷かれていようが侵入は可能であるし人ひとりを浚う事も訳が無い。
その男の通り名は『不死の死神』といい、嘗ては暗殺を生業としていた。音もなく忍び寄り対象のみを完全に殺害するその男はゼノにとっても仇といえる存在であった。
最初のコメントを投稿しよう!