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She is insane.(亜貴、叶、奏、Miser、Luna)
子供が出来ない身体だと知ったのは、高校時代の同級生である彼と結婚をして六年目の事だった。
大学の卒業を待たずに入籍したのは彼がどうしても大学卒業迄待てないからという理由で――とても、かわいい人だった。
私は彼との子供を望んでいたけれど、私の身体は自然的な方法ではもう子供を授かれない身体になっていて、彼の性欲も元々強い方では無かったから子供は絶望的だった。
子供を授かる事の出来ないその大きな理由は、中学時代の堕胎だった。その事は彼に話していないし、当然話せる訳も無かった。若い頃の無理な堕胎が大人になった今私が望んでも彼との子供を授かれない状態にしてしまった。
「別れて欲しい」
「……嫌だ」
彼は離婚に納得してくれなかった。それでも私を愛しているからと、子供だけが全てではなく共に過ごせるならそれだけで良いと。
彼の子供を産んであげる事の出来ない私に妻としての価値は無い。何度訴えても彼にはそれが伝わらなくて、記入済みの離婚届だけを置いて家を出た。
彼は優しくて傷付きやすい。高校の時、私たちの同級生が立て続けに何人も亡くなった。優しい彼はそれに耐え切れなかった。彼自身も何度も自ら命を絶とうとして、私は彼に生きていて欲しかった。勿論彼の事はちゃんと愛していたし、彼の事を支え続けたいという思いもあったけれど、子供を産めないという事実に私自身が耐え切れなかった。
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