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彼の元を離れた私が向かった先は親戚――再従姉妹の元だった。
同い年で幼い頃から良く共に遊んで過ごし、今考えればあの頃が一番幸せな時期だったのかもしれない。
時を経て――中学生の頃、彼女が母親の無理心中に巻き込まれた頃から私たちの道は大きく外れてしまった。
高校時代は一切彼女の消息が掴めなくなっていたけれど、伝手を頼って今の彼女の居場所を突き止める事が出来た。
彼女は子供の頃から私にとってのヒーローで、憧れの存在だった。
約十年振りに対面した彼女には――私の知るヒーローの面影は一切無くなっていた。
彼女は所謂『魔女』の血を引いていて、その関係で彼女の弟も高校時代に亡くなった。母親の無理心中はそれとは全く関係の無い事らしいけど、あの一件依頼彼女は本当の『魔女』になってしまった。
ショートヘアーに笑顔が眩しい、演劇部の王子様の面影は一切無く、そこに居たのは――陰の気を放つ一人の『魔女』だった。
「キョウ……」
髪は伸びっ放しで肌もぼろぼろ、どうやって生計を立てているのかも分からない。彼女はただ一人、そこに佇んでいた。
仕事も家庭も、連絡先も全て捨てた私は彼女の内から響く哀しい叫び声に惹かれ、彼女の手を取った。
――もう泣かないでいいよ、これからは私が側に居るから。
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