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 ――時は、僅かに遡り。  樹海に佇む古城、一月に一度開催されるその宴は絢爛を極めていた。  華やかな大広間から離れた古城の奥、静寂に響く宴を抜け出した二人の子供の軽い足音。  冬榴は直前に五歳の節目を迎え、この日始めて一族の宴に参加する折となった。 「ま、まってぇ……」  前を走るその少年は冬榴よりも僅かに年上で、自分より年若い冬榴に初めて会った少年は大人たちの退屈な祝宴を抜け出すタイミングで冬榴を誘った。  少年にとっては馴染みの城内でも、冬榴からしてみれば石造りの古く暗い城内は恐怖の象徴でもあり、大広間の諠譟と明るさが遠ざかっていく度冬榴の不安は募っていった。  そんな冬榴の心情など一切顧みず、少年は勝手知ったる城内を更に奥へと駆けていく。  そして辿り着いた最奥。今にも崩れ落ちそうな古城の中、その扉が豪奢で立派であることは僅か五歳の冬榴にも感じ取ることが出来た。  精巧な細工が施された金属製の扉は一見して相当の重量があるように見えたが、少年が扉を押すと重低音を響かせながらゆっくりと訪問者を招き入れた。 「ほら、ここ!」  冬榴は少年の背後にしがみついていたが、少年の言葉に促されるように目線を上げる。  まさかお化けでも出て来るのではないかと怯えていた冬榴だったが、その目に飛び込んできた光景に目を輝かせた。 「わぁっ……!」  この場所は少年が初めて会った冬榴に見せたかった「とっておき」の場所だった。
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