Prisoner -救出-

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Prisoner -救出-

「――ちかげ、千影!」  千影は自らの名前を呼ぶ声に顔を上げる。鉄板の仕込まれた分厚い扉の向こうからその声は聞こえ、千影は立ち上がり扉に近寄る。  もう何日もまともな食事すら摂っていない。それでも自らを呼ぶその声だけは間違いようが無かった。 「深雪……」  扉一枚隔てた先から聞こえる微かな声に深雪は振り返る。カチャカチャと金属音が響き深雪は侵入時に奪い取った鍵束を使い千影が閉じ込められているその部屋の扉を開ける。  中世の豪華な調度品で揃えられていながらも、出入り口である窓や扉には鉄の格子や固い施錠により内側からは脱出不可能な状態となっていた。 「深雪、なんでこの場所……」  千影のやつれた表情を見た深雪は衝動的に抱き締めたい衝動に駆られるが、今はそれよりもこの屋敷から脱出することが優先であると気持ちを切り替え、千影の腕を引いて走り出す。 「いいから、こっちです!」  幼少期に引き取られてからずっと兄弟同然に過ごしてきた千影が不意に姿を消したのは数週間前のことだった。  手を尽くし、千影が監禁されている場所を突き止めることまでは出来たが、その警戒を掻い潜って屋敷の中へ忍び込むには深雪単身の方が都合良かった。  長い通路の曲がり角の先から複数の迫りくる足音を深雪の耳はぴくりと捉える。追手に勘付かれてしまったことに焦る深雪だったが、ふと廊下の大窓から下へと視線を向けるとその先に微かな光明が見えた。 「あれは……」  折角千影を助け出したのに、ここで再び捕まってしまえば元も子もない。賭けに出るしかないと考えた深雪は迫る追手の声に焦る千影の腕を掴んで自分の肩へと回させる。 「千影、俺に捕まってください!」 「え、ちょっ、深雪!?」  部屋の場所は最上階の三階、階段を使い下りようとしても追手に見つかることは必至。自分とそう体格も変わらない千影を背中に負った深雪は躊躇うこともなく、その窓のガラスを蹴破り三階の窓から草の生い茂る裏庭へと飛び降りた。
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