332人が本棚に入れています
本棚に追加
コテンと首を傾げて、上目遣いで見上げた。
正直、確信犯。
多分、匡はこの角度で甘えられるのが結構好き。
「…そういう可愛いことすれば、俺の機嫌が治ると思ってるんですか?莉音さん」
「…えへ、バレた?」
「バレバレです。何年お付きしてきたと思ってるんですか。小悪魔が…」
そんなことを言いつつ、満更でもない顔で私の頬をフニフニと弄る匡は案外ちょろい。
「せっかくいつもより早い時間だし、どこかバーでお酒飲んだり…」
ウキウキしながらそんな提案をしかけたのに、「は、馬鹿ですか?」と失礼な返事が返ってきてキョトンとしてしまった。
「さっきのアレで俺の怒りが治まったとでも?」
「…へ?…わっ、」
いきなり、ヒョイっと私を抱き上げた匡は美しすぎる完成した笑顔をこちらに向けて言った。
「お仕置きは済んだけど、愛する妻に隠し事をされた心の傷が癒えてません。」
「…へ、へ…?だから、それは謝って…」
「謝って済むなら警察は要りません。」
「…ヤクザのくせに警察がどうこう言うなよ…」
私を横抱きにしたままスタスタと出口に向かって歩き出した匡は意地悪に笑ってコテンと首を倒す。
…その角度に私が弱いことを…この男も十分理解しているのだろう。
「俺の心の傷が癒えるまで…三日三晩抱き潰してやるからそのつもりで」
「…っ、な…!」
「“もっと”して欲しかったんだろ?よかったな、莉音」
「…、」
ふふん、とご機嫌に笑う匡にパクパクと口を開閉するばかりで何も言葉の出ない私。
虎城匡を怒らせてはいけない。
裏の社会でのそんなルールは…、私に対しても適用されるらしい。
白虎の獅子
ーendー
最初のコメントを投稿しよう!