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初任務
歩道を疎らに歩く多種多様な人々。それは年齢だけでなく姿形――種族を含め様々。だが誰一人してそれを気に留める様子はなく、まるで息を吸えば酸素を取り込み呼吸できることのように見慣れた風景だと歩みを進めていた。
そんな人波に逆らいつつもビル群を縫う風ように人の間を駆けるスケボー。それに乗った少し低い背の人物はプルオーバーパーカーのフードを深く被り、視線も俯き気味で性別は見て取れない。そしてフードの上から付けたヘッドホンからは、まるで早朝目覚まし代わりの囀りようなリズムから始まる決意と希望に満ちた音楽が流れていた。
そして体の一部と言わんばかりに乗りこなしたスケボーは獣人をひらりと躱すとそのまま流れるように陽光すら届かない裏路地へと入っていった。
「いいからさっさと渡せつってんだ!」
「ひぃぃ。でもこれは会社の物なので、僕がクビに――」
「うっせ! んなことどーだっていいんだよ」
正面から怒鳴りつけるオークとその周りで各々武器を手に嘲笑する三人のオーク。そんな四人のオークに囲まれ壁際へ追い込まれたスーツ姿の人間はボストンバッグを抱き抱えながら怒声に脅えていた。
そんな喝上げの犯罪現場へ向けて地面を蹴り新鮮な速度を得たスケボーは更に突き進む。
「いいからよこしやがれ!」
路地裏に響く殴り掛かるように乱暴な声。もう一度速度を上げたスケボーの上でフードの人物はしゃがみ込むとテールを弾き同時に跳んだ。
怒声の後ボストンバッグへ伸びる横暴な手は太く大きい。
だがその手がバッグに触れる直前、オークの頭へ無人のスケボーが直撃した。役目は終えたと地面に落ちるスケボー。
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