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「責めないの?」
「だって……どうしようもないんでしょ?」
私なりにヒロ君という人がどういう人なのかが分かっている。だらしなくしているように見えるけど、決断力はあって、こうと決めたら絶対に動かない。彼が一度結論めいたことを口にしたら、それはもう決して飜ることがない。
ヒロ君の中ではもう終わった話なのだ。だから、相談するとか私の意見を聞くとか、そういうのはない。
文句も言わせてもらえない。
いや、私の方で諦めている。
この人には何を言っても無駄だって。
「相変わらず、物分かりがいいよな小鳩は」
やっとゲーム音が止まって、ヒロ君が振り向いた。
「そういう頭のいいところが好きだったよ。面倒くさいこと言わないし、話が早いから。だけどさ、お前のそういうところがつまんない」
喉がヒュッと締まる感覚がした。
「つまんないって……酷くない?」
「全部先回りして、俺の気に入らないことはしないようにしてくれるのはありがたかったけどさ……それ、違うからな? 優しさとかじゃないから」
ヒロ君は全部お見通しっていう目をしていた。
「お前はただ、怒られたくなかっただけじゃないの?」
三年半に渡ったヒロ君との交際は、その夜、一方的な終わり方をした。
一方的に私がフラれて、終わった。
浮気をしたのはヒロ君の方だったのに、文句を言われたのは私の方だった。
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