失恋ランチは恐怖の始まり

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失恋ランチは恐怖の始まり

「それで、何も言わずに別れたの⁉︎ なに考えてんの? バカじゃない⁉︎ 浮気したのはそいつなんでしょ⁉︎」 「うん。まあ、そうなんだけど……」  ヒロ君と別れた翌日、昼休みに入ったお蕎麦屋さんでも、私は同僚の須崎(すざき)沙羅(さら)に怒られた。  沙羅は私と一番仲のいい同期だ。よく飲みに誘ってくれるし、仕事の日はほぼ毎日一緒にランチをする。ただ、こうして外食に行くのは珍しい。普段、私はヒロ君の朝ごはんを作るついでに自分のお弁当を作って持って行っていたからだ。今朝はその必要がなくなり、朝食も手抜きで適当になってしまったからお弁当は作らなかった。  私がランチに沙羅を誘うと、彼女はすぐに私の腫れぼったくなった瞼の異変に気がついて「昨日、何かあったの?」と尋ねてきた。そこで、昨日の一件を打ち明けて──今に至る。 「あんたね、お人好しが過ぎるよ? 慰謝料でも貰わなきゃ! 小鳩の彼氏……ああ、もう元カレか。無職だったんでしょ? 小鳩が養ってたようなもんじゃん。それなのに小鳩を振るってどういうこと? しかも浮気? 信じられない!」 「そうだよねえ。ありえないよね……。でも私にも悪いところがあったのかも」 「どこが? 三食きっちり食事作ってあげてさ、洗い物に洗濯に掃除、なにひとつ手伝わない奴を嫌味も言わずに支えてたんでしょ? あんたたちが付き合ってた時は言うの遠慮してたけど、はっきり言ってあいつはクズだよ。あんな奴のどこが良かったの?」 「ブレないところ……かな」 「は?」 「純粋で、信念があったから自分に合わない仕事が続けられなかっただけ。そこまで自分っていうものを持っているところは尊敬できるんじゃないかと……」  
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