失恋ランチは恐怖の始まり

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 ヒロ君だって、最初からクズだったわけじゃない。同棲を始めたばかりの頃はたまに料理をしてくれたり、掃除をしてくれたりしていた。だけど仕事がうまくいかなくなって、上司と喧嘩になって自分から会社を辞めてしまってから、だんだんと家事をサボるようになってしまった。  自分に合う仕事が見つかったら、きっと生活態度も真面目になって、ちゃんとするはずだと思っていた。私のこともいつか「支えてくれてありがとう」って感謝してくれるんだと信じて……いたんだけど。   「でも、ヒロ君にしてみたら私の甘やかしが原因でいつまでも浮上できなかったんだっていうことらしいの。私がもっと叱咤激励してあげていたらあそこまでダメになることもなかったんだって。私の優しさが間違ってたみたい。だから……私が悪かったのかなって」 「違う! バカ! 全面的に悪いのはあいつ!」    沙羅の方が泣きそうな顔をして私を叱りつけた。 「あんたはよくやったよ。よくあんなクズに三年も」 「三年半」 「三年半、ながっ! ああ、悔しい! こんなことになるんだったら、さっさと別れるべきだったのに! それに、あいつからじゃなくて小鳩の方から見切りをつけてさっさと振ってやるべきだったんだよ!」 「そんなこと、できなかったよ」  初めてできた彼氏だった。二十五歳にして初めて男の人から告白されて。いい思い出の方がたくさんある。  こんな地味な私に、むしろヒロ君はもったいないくらいの彼氏だったのかもしれない。そばにいるだけで幸せだったなと思っている。
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