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「曝け出してくれて、いいもの見せてくれてありがとうじゃない? そのくらいの気持ちでいれば気にならないって」
「そんなもの?」
私はどこか納得がいかなかった。
お風呂から出たら大河ドラマ一緒に観ようねっていつも約束しているのに、私が出てくるまで待てないのだ、あの人は。絶対先に寝落ちしている。
勝手に観てていいよと言われてはいるけど、本人が不在中にコソコソ観るのはどうも居心地が悪くてできない。
今週は鷹野さんの帰りが遅い日も多くて、なおさら観る時間がなくなっていた。夕飯もせっかく用意しようとしていたのに食べて来るからとメールで断られ、翌朝に回すこともあった。
私の一番の不満はそこかもしれない。
「とにかく勝手すぎるの、私は遠慮してるのにっ」
「私は?」
「あ、違う。ヒロインのこと。うっかり感情移入しすぎて……あはは」
「あんたダメンズ好きだもんね」
「好きじゃない!」
私は声を大にして言う。あんな人、絶対に好きにならない!
「でもさ、そうは言っても結局好きになっちゃうんじゃないの、そのヒロイン」
沙羅はたらこのサラダスパゲティーをフォークにクルクル巻いたものをパクッと口に入れた。
「恋愛ドラマの宿命よねー」
「宿命……なの?」
そう言われるとなんだか不安になる。
「最初から嫌なところ見ていたら、あとは上がる一方じゃん。そのヒロインが落ちるのも時間の問題と見たね」
「嫌なこと言わないでよ……」
私はため息をつきながらタコさんウインナーを改めて口に運んだ。
その時、ピコンと私のスマホが鳴った。
鷹野さんからのメールだった。
『今夜も遅くなるけど、明日は久しぶりに接待もないから早く家に帰るよ。あんたの飯が食いたい』
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