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私はそれを見てちょっとだけ胸を弾ませた。
明日の金曜日は私も特に急ぎの仕事はないから、定時に帰って週末用の食材を買い込んでこようと思っていたのだ。それにその次の日は土曜日で、ようやく待ちに待った週末だった。
今度こそ鷹野さんとゆっくりと過ごせる。いや、目的は鷹野さんじゃなくて、鷹野さんが持っているDVDの方だけど。
そうそう、休日になったら布団も持ってきてもらわなくては。
鷹野さんはここのところ毎日外回りでだいぶお疲れの様子だった。それなのに、いつまでも布団なしの床の上で寝てもらうのは気が引けていた。そろそろ秋めいてきて朝晩は冷えるようになってきたから、風邪を引いてしまわないかと少し心配だったのだ。
こっちが心配しているのに大丈夫だって言って絶対に床で寝ちゃうし。
「よし、明日はごちそう作ろうっと」
「ん? 明日、何かあるの?」
「あ、何もないよ! なんでもない。週末ひとりで過ごすの寂しいから、プチ贅沢しようと思って」
「ふーん」
沙羅は同情的な目で私を見た。彼氏がいないアラサー女のぼっち週末のプチ贅沢と聞いて、哀愁を感じない者はいないだろう。
けれども、私のこの余計な一言が翌日になって大騒動を起こすことになる。
──
「こーばと! おはよ!」
翌朝、沙羅が元気に朝の挨拶をしてきた。金曜日は沙羅も嬉しいらしく、上機嫌だった。
「おはよう、沙羅」
「お待たせしてて悪かったけど、やっと決まったよ」
沙羅はいきなりそう言った。
「何のこと?」
「何って、合コンに決まってるじゃん。今夜七時、串焼き居酒屋で飲み放題!」
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