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「えっ。今夜?」
驚いて聞き返すと、沙羅は「何も用事ないんだよね?」と確認してきた。
忘れていた。沙羅に合コン相手、誰でもいいから見つけてきてって頼んでいたこと。
「人集めるの、大変だったんだよー。社食のランチ、二回も奢らされたんだから。でもなんとか独身のいい男を四人もキープしたからね。あとはこっちも二人、私の友達連れて行くから四人と四人で楽しく飲もう!」
「そ、そうなんだ……そんな大掛かりに集めてくれたんだね……」
これは、断りづらい。
「当たり前じゃない。小鳩には今度こそ幸せ掴んでほしいからね。早くあんなクズのことは忘れて、新しい恋に踏み出してほしいわけよ」
「あ、ありがとう……」
ヤバい。せっかく鷹野さんとの同棲もどうにか軌道に乗り始めていたところだったのに、合コンだなんて。鷹野さんとの関係を絶って新しい恋に走る勇気はまだ私にはない。リハビリ程度の今の関係だけで十分刺激的なのに。
今夜は鷹野さんも早く帰ってくるって言っていたのにな。
だけど、沙羅が私のために苦労してくれたことを思うと無碍に断るわけにもいかない。私は沙羅が自分のデスクに戻った後で、こっそり鷹野さん宛てのメールを作成した。
『鷹野さん、ごめんなさい。今夜は友達と女子会の集まりに行くことになっちゃいました。適当に晩御飯をどこかで済ませてもらえますか?』
嘘をつくのは心苦しいけど、仕方がない。あなたをほったらかしにして他の男性たちと夜遊びしてきますなんて正直に言う方が気分悪いと思うし。
今度のは余計な気遣いにはならないよね。私はそう祈りながら、メールを送信した。
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