第1章 失恋したら異世界に転移しました

12/14
前へ
/14ページ
次へ
 明らかに日本人ではない名前に天翔は戸惑う。が、案外冷静な自身もいて。  きっと、ナイトハルトの美しい銀髪や黄玉の目を見ていたからだろう。  日本人どころか、地球の人間ではないことは薄々感じ取っていた。 「一応この邸宅の持ち主で、身分的には王弟にあたる」 「え、えぇっと」 「王弟というのは、そのままの意味。現国王の弟ということ」  男の予想もしていなかった高い身分に、天翔は驚愕することしか出来ない。 「はい、どうぞ」  半分放心している天翔にティーカップが差し出される。  上品なデザインのカップは、日本でいうとアンティーク調というものだろうか。  鼻に届くのは、いい香り。ハーブティーかなにかなのだろうか。心が少し落ち着いた。 「疲れているみたいだから、ハーブティーにした。安心して、変なものは入っていない」 「は、はい」  別に毒が入っていることを心配しているわけではない――などと思いつつ、天翔はカップを手に取った。ハーブティーの色合いは紅茶に近いだろうか。  天翔は水面に数回息を吹きかけて、カップをゆっくりと口に運ぶ。口の中いっぱいに広がった甘み。自然とほっと息を吐く。 「このシュタルク王国は建国七百年以上を誇る国だ。近隣にある帝国と権力を二分割している」 「はぁ」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加