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明らかに日本人ではない名前に天翔は戸惑う。が、案外冷静な自身もいて。
きっと、ナイトハルトの美しい銀髪や黄玉の目を見ていたからだろう。
日本人どころか、地球の人間ではないことは薄々感じ取っていた。
「一応この邸宅の持ち主で、身分的には王弟にあたる」
「え、えぇっと」
「王弟というのは、そのままの意味。現国王の弟ということ」
男の予想もしていなかった高い身分に、天翔は驚愕することしか出来ない。
「はい、どうぞ」
半分放心している天翔にティーカップが差し出される。
上品なデザインのカップは、日本でいうとアンティーク調というものだろうか。
鼻に届くのは、いい香り。ハーブティーかなにかなのだろうか。心が少し落ち着いた。
「疲れているみたいだから、ハーブティーにした。安心して、変なものは入っていない」
「は、はい」
別に毒が入っていることを心配しているわけではない――などと思いつつ、天翔はカップを手に取った。ハーブティーの色合いは紅茶に近いだろうか。
天翔は水面に数回息を吹きかけて、カップをゆっくりと口に運ぶ。口の中いっぱいに広がった甘み。自然とほっと息を吐く。
「このシュタルク王国は建国七百年以上を誇る国だ。近隣にある帝国と権力を二分割している」
「はぁ」
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