47人が本棚に入れています
本棚に追加
(未遂、だよな?)
確かめるように自身の身体をペタペタと触ってみる。身体に異変はない。どこかが痛むということもない。
きっと、自らの貞操は無事だ。天翔がそれにほっと胸をなでおろしていると、隣で誰かが寝返りを打ったのがわかった。
緊張からか、天翔自身の鼓動がひときわ大きく聞こえる。見たくないと心も頭も訴える。
(かといって、見ないなんてこと出来ない)
意を決して、天翔は声のほうに視線を向けた。――おのずと息を呑んでいた。
何故ならば、そこにいた男は恐ろしいほどに美しかったから。
触り心地のよさそうなふわりとした銀髪。閉じられた瞼を縁取るまつげは驚くほどに長い。唇は形がよく、妙な色気を感じさせる。
(かっこいいと言うよりは、美人系だ)
見るからに日本人ではない彼に、恐る恐る手を伸ばす。
天翔の指が男の前髪に触れる。それがまるで合図になったかのように、男の瞼がゆっくりと上がっていく。
覗かせた目は、まるで宝石のような金色。
「……やっと」
「ひっ」
男が天翔のほうに手を伸ばした。
爪の先まできれいに整えてある男の指が、天翔の頬に触れる。流れるような動きで頬に男の指が滑ると、背筋にゾクゾクとなにかが這いまわったような感覚に襲われた。
「やっと、来たのか」
「あ、あのっ!」
――この男は一体なにを言っているのだろうか?
咄嗟に警戒心がむくむくと膨れ上がり、天翔は身を守るように自らを抱きしめる。
男はくすっと声を上げて笑っていた。
「可愛い顔だ。……戸惑った顔は、いじめたくなるくらいに可愛い」
彼は褒めたつもりだろうが、天翔からするとちっとも褒められてはいない。
頬が引きつった。ただ、天翔の視線は男の動きを追ってしまう。起き上がり、掛布団から出る男。
「っつ」
天翔の頬に一瞬で熱が溜まる。男は上半身裸だったのだ。
(しかも、すっごくきれいなんだけど……!)
慌てて手で目元を覆うのに、指の隙間からちらちらと男の身体を見てしまう。
身体自体は細いのに、筋肉はしっかりとついている。それに、筋肉の量も過度ではない。
美しい顔に似合う、理想的な肉体。男は顔だけではなく、身体も美しかった。
「なにを恥ずかしがっている。別に恥ずかしがるようなことじゃない。男同士だろう」
「そ、そういうものじゃないです!」
男同士だったとしても、天翔にとっては刺激が強すぎる。そのせいか、恥ずかしいという感情が胸を支配した。
最初のコメントを投稿しよう!