第1章 失恋したら異世界に転移しました

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(未遂、だよな?)  確かめるように自身の身体をペタペタと触ってみる。身体に異変はない。どこかが痛むということもない。  きっと、自らの貞操は無事だ。天翔がそれにほっと胸をなでおろしていると、隣で誰かが寝返りを打ったのがわかった。  緊張からか、天翔自身の鼓動がひときわ大きく聞こえる。見たくないと心も頭も訴える。 (かといって、見ないなんてこと出来ない)  意を決して、天翔は声のほうに視線を向けた。――おのずと息を呑んでいた。  何故ならば、そこにいた男は恐ろしいほどに美しかったから。  触り心地のよさそうなふわりとした銀髪。閉じられた瞼を縁取るまつげは驚くほどに長い。唇は形がよく、妙な色気を感じさせる。 (かっこいいと言うよりは、美人系だ)  見るからに日本人ではない彼に、恐る恐る手を伸ばす。  天翔の指が男の前髪に触れる。それがまるで合図になったかのように、男の瞼がゆっくりと上がっていく。  覗かせた目は、まるで宝石のような金色。 「……やっと」 「ひっ」  男が天翔のほうに手を伸ばした。  爪の先まできれいに整えてある男の指が、天翔の頬に触れる。流れるような動きで頬に男の指が滑ると、背筋にゾクゾクとなにかが這いまわったような感覚に襲われた。 「やっと、来たのか」 「あ、あのっ!」  ――この男は一体なにを言っているのだろうか?  咄嗟に警戒心がむくむくと膨れ上がり、天翔は身を守るように自らを抱きしめる。  男はくすっと声を上げて笑っていた。 「可愛い顔だ。……戸惑った顔は、いじめたくなるくらいに可愛い」  彼は褒めたつもりだろうが、天翔からするとちっとも褒められてはいない。  頬が引きつった。ただ、天翔の視線は男の動きを追ってしまう。起き上がり、掛布団から出る男。 「っつ」  天翔の頬に一瞬で熱が溜まる。男は上半身裸だったのだ。 (しかも、すっごくきれいなんだけど……!)  慌てて手で目元を覆うのに、指の隙間からちらちらと男の身体を見てしまう。  身体自体は細いのに、筋肉はしっかりとついている。それに、筋肉の量も過度ではない。  美しい顔に似合う、理想的な肉体。男は顔だけではなく、身体も美しかった。 「なにを恥ずかしがっている。別に恥ずかしがるようなことじゃない。男同士だろう」 「そ、そういうものじゃないです!」  男同士だったとしても、天翔にとっては刺激が強すぎる。そのせいか、恥ずかしいという感情が胸を支配した。
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