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ナイトハルトの瞳が天翔だけを映している。
その黄玉の目に映った天翔自身はひどく動揺しているように見える。
(そりゃそうか。起きたら知らないベッドの上だったわけだし……)
今になって、焦りが生まれてきた。額から汗がツーッと流れる。
ごくりと息を呑んで、天翔はナイトハルトを見つめ返した。
すると、自然と見つめ合うような形になる。途中で照れくさくなり、天翔は視線をそっと逸らす。
「アマト」
ナイトハルトが天翔の名前を呼んだ。長い指が天翔の肩に触れる。
触れたかと思うと、彼の指は肩を撫でてくる。ピクリと身体が跳ねた。ナイトハルトが触った部分が不思議と熱い。
「くくっ」
耳元でナイトハルトが笑った。
「可愛いな。お前は、可愛い」
まるで天翔に言い聞かせるようにナイトハルトが言葉を紡ぐ。
頬に熱が溜まった。誤魔化すようにぷいっと顔を背けるが、耳元で「アマト」とナイトハルトが囁く。
心地よい低さの声に、鼓膜どころか脳髄までしびれるような感覚。連動するようにゾクゾクとする背筋。
「不貞腐れるな。可愛い顔を、俺に見せろ」
これでもかというほどに色気を孕み、色欲をまとっている。
視線はナイトハルトに惹きつけられていく。身体の芯がじぃんと熱を持つ。
(この声、おかしい――!)
咄嗟に両耳を手でふさいだ。
ナイトハルトの声にはまるで魔法のような力がある気がする。人の心の奥底に忍び込み、容赦なく内側を暴いていく。気が付けばすべてを丸裸にされ、抵抗する術も失うかのような――。
顔を上げて、二人の視線が交わる。ナイトハルトは微笑んでいた。
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