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「ないと、はるとさん」
少しして、天翔はナイトハルトの名前を口ずさんだ。瞬間、ナイトハルトの指が天翔の顎を掬い上げる。
磁石が引き寄せるかのように、天翔はナイトハルトから視線を逸らせなかった。心臓の音がどんどん駆け足になる。自身が唾を飲む音さえも、生々しく聞こえる。
「アマト、俺はキミを歓迎する。――いらっしゃい、異世界の人」
天翔の顎を掬っていた指が移動し、今度は天翔の前髪を掻き上げた。
ナイトハルトの顔が近づき、あいさつ代わりとばかりに額にキスを落とす。ちゅっとリップ音が耳に届いたような気がした。
(は、はぁ――!?)
一拍置いて、天翔の心が絶叫する。
(馴れ馴れしい! というか、これがこの国の文化か!?)
出逢って早々、あいさつ代わりにキスをするものなのだろうか?
確かに地球にもキスはあいさつという文化の国はあった。つまり、そうだったとしてもおかしくはない。
「くくくっ、本当に天翔はからかいがいがあるな」
ナイトハルトの腕が天翔の背中に触れる。彼の指は天翔の背骨をなぞるかのように動く。身体が跳ねるのが、止まらない。
「や、やめてください!」
ナイトハルトから距離を取ろうと身体が無意識のうちに動いた。しかし、すぐにソファーの端っこに追いやられ、逃げ道がなくなる。ナイトハルトが天翔に覆いかぶさった。
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