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◇◇◇
天翔は目を覚ました。
意識がはっきりとするにつれて、視界が徐々にクリアになる。
(……ここ、は)
視界に映ったのは、見知らぬ天井だった。
「あれ、俺、どうしたんだっけ」
眠る前の記憶を頭の引き出しから引っ張り出す。確か最後は翔子と響也の結婚式で――。
(ベンチに腰かけて、失恋に泣いていたことまでは覚えているんだけど……)
それからの記憶がない。もしかしたら、飲みすぎて記憶を飛ばしたのだろうか?
などと思うが、二日酔い特有の身体のだるさや頭痛がない。ということは、二日酔いで記憶を飛ばしたわけではなさそうだ。
「というか、ここはどこだろ」
見知らぬ天井ということは、自宅ではないはずだ。
視線を動かし、周囲を観察する。一番に目を引いたのは、天井から吊るされたきらめくシャンデリア。
煌びやかで大きくて豪華。まるで異世界モノの漫画に出てくるような――。
「って、えぇっ!?」
気が付いたら、自然と飛び起きていた。流れるように自身の頬をつねれば、確かな痛みに襲われる。目が覚める気配はない。
戸惑いながら室内を見渡せば、並んでいる家具は清潔感が漂う白系統のものばかりだ。アクセントとばかりに金色の模様があしらわれているのが、これまた上品さをアップさせている。
床に敷かれている紺色の絨毯は、この部屋の内装に上手くマッチしている。まるで、この部屋のためにあるように作られたような――。
「……ここ、どこだよ」
天井に見覚えがないのと同じで、天翔には室内にも家具にも見覚えがない。こんな豪華な部屋に一度でも入ったならば、一生忘れないはずだ。
(ここは、ホテルの一室とか?)
可能性は否定できない。
天翔はしばらく思い詰めていたが、ハッとして辺りを手で探る。
「スマホは……」
確か上着のポケットに入れていたはず。そこまで考え、上着がないことにも気が付いた。
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