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「……えっと、その、それって……?」
アデルミラが混乱しながらそう言葉を返せば、ロレンシオがアデルミラの身体をさらに強く抱き込んでくる。その後「俺は、アデルミラ一筋だ」と囁くように告げてきた。
「あのな、王女殿下は友人としては素晴らしい人だと思う。が、恋愛対象としては無理だな。……それに」
「……なにか、あるの?」
「王女殿下には別に好きな男がいる。だから、俺との婚姻は絶対に嫌だと言っていた」
そう言いながら、ロレンシオはアデルミラの髪の毛を手で梳きながら、口づけを何度も落としてくる。それは、本当に愛おしいと言いたげな態度であり、アデルミラの心が疼く。
(それって……私の、早とちりだったっていうこと?)
ロレンシオの言葉を信じるのならば、アデルミラの早とちりだったということになるだろう。それを実感して、アデルミラは顔を真っ赤にしてしまった。ロレンシオのことを、信じればよかったのに。なのに、信じることが出来なかった。捨てられたと思った。自分は、なんと流されやすい女なのだろうか。
「もうすぐ、俺と王女殿下の婚姻話がなくなったというニュースが出るはずだ。……悪かったな、不安にさせて」
ゆっくりとそう囁き、ロレンシオはアデルミラの身体を解放してくれた。そのため、アデルミラがロレンシオと視線を合わせれば……彼は、ただ笑っていた。その所為だろうか、アデルミラは「……バカ」と言うことしか出来なくて。
「バカ、バカッ! お手紙の一つでもくれれば、私だって……!」
「そうだな。もっと早くに、本当は知らせるつもりだったんだ。だが、いろいろと厄介ごとが多くてな……」
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