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「……お兄ちゃん、私のことなんてきっと忘れちゃうわよね……」
自分はこの三年間、彼のことを忘れたことは一度もなかったのに。なのに、ロレンシオは王女や仲間たちに囲まれて、幸せに過ごしていたのだろう。そう思うと、やるせない。余計に惨めになる。そんなことを考え、アデルミラは豪快にグラスを傾ける。……もう、思考回路はまともに働いていなかった。
「も~、だったら、私はお兄ちゃんよりも有能で素敵な男を、捕まえてやるんだからぁ~!」
せっかく王都に引っ越してきたのだ。ならば、この王都の結婚相談所に登録してやろうじゃないか。今まではロレンシオのことしか考えなかった。彼にしか、想いを寄せられなかった。でも、今は違う。今ならばきっと――ほかの素敵な男性に、目を向けることが出来るだろう。
「どの結婚相談所が良いかなぁ?」
このカリン王国は恋愛至上主義の国だ。そのため、どの街にも出会いの場である結婚相談所がある。ならば、自分もそこに登録して新しい恋を見つけようではないか。アデルミラは、そう考えていた。
「……この王都で一番大きな相談所って……やっぱり、『リナリア』よねぇ」
この王都で最も繁盛している結婚相談所『リナリア』。そこならばきっと、登録している人も多いし、自分が理想とする男性にも出逢えるはずだ。思い立ったが吉日。善は急げ。そんなことを考え、アデルミラは明日結婚相談所に登録しに行くことを決めた。
「……お兄ちゃんなんかよりも、ずっと素敵な男性を捕まえてやるんだからぁ!」
この選択が、諸々間違ったことだとアデルミラが気が付くのは――まだまだ、先の話。
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