1/1
前へ
/1ページ
次へ
漂ふ 優美な長い尾。 鮮やかな白の朱の華。 これは、まだ誰も知らない、 ある鯉の物語。 その昔、上へ上へと上りつめんとする、 1匹の鯉がいた。 龍を目指し、滝に打たれる小魚。 しかし、その心の内には、もう既に龍が宿っていた。 幾年、幾千年をかけて… 硬い鱗が剥がれても 打ちつける水を跳ね除けて 大きな水しぶきを上げて、 滝の頂上に辿り着く。 そこにはもう、かつての小魚はいない。 強く、固く、揺るぎない信念。 大きく、逞しく、気高く空を泳ぐ、 龍の誕生である。 ここは、龍の滝。 かの伝説の龍は、水神として、ここに眠るのだとか。 ーーー龍の滝の石碑より。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加