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序
外ではまた雨が降り続けている。都会の喧騒にかき消されるような、静かでしとしととした雨音が窓を叩いていた。
ふと、私はこの雨を見ているうちに、ずいぶん前の記憶が蘇ってきた。
おばあちゃんが話してくれた、「てるてる坊主」の話も、私の心の中ではまだ生き続けている。
家族で茨城県のおばあちゃんの家に帰省した小学生の三連休。あの時も、ずっと雨が降っていた。
私はその時、弟と一緒にてるてる坊主を作っていた。大雨が外を叩き続ける中、ただ晴れることを祈っていたんだ。
「そのてるてる坊主、知ってるかい?」
おばあちゃんが、いつもの優しい笑顔じゃなく、少し険しい顔でこちらを見つめてきたのが、今でも忘れられない。
「知ってるよ!」
と私と弟は口を揃えておばあちゃんに答える。
しかしながら、おばあちゃんは、
「いんや。そういうことじゃなくてね」
と否定してきた。
「どういうこと?」
と私が聞くと、おばあちゃんはゆっくりと座り直し、静かに語り始めた。
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